第14章 彼女は他人しか考えない
事務所に着くと、笑い声と共に、他の練習生達の声が聞こえた。
「あの子〜どうなったかな?」
「今頃可愛く泣いてんじゃん?」
「ユリンオンニ がいないから彼女に嫌がらせ出来て満足!調子のり好きなのよ…イケメンにチヤホヤされててさ!」
ユリンとはきっと彼女の専属のメイクなのだろう。
彼女は彼等の話に耳を傾けながら、目を瞑っていた。
「っ……全く……」
バン!!勢い良く扉を開けた。
そして、彼女や会社に響き渡るくらい大きな声で彼等に言う。
「ろくな話してないんだな!」
「え?誰?」
「あ?この人この前の練習の時、彼女をかばってたやつだよ……」
「えー?あの子何?イケメンにどう取り入ってんのお?教えて貰おうかな?」
彼女が取り入る?された事もないよ……
あったのだって、あの1度だけだ。
だけど、
「あの子は人が苦手なのに……、女の子なのに、夜中に1人であの子を歩かすなんて…何かあったらどうするつもりだったんだよ!!」
「はぁ?何なの君〜ウザイんですけど」
「あの子……辛そうだったんだ!!」
「はぁ?それは…傑作だわ……」
「ウケるな!俺達が入る時までに消えてくればいいけどね!」
揃いも、揃って、彼女をなんだと思っているのだろう。
彼女はただ、大好きな事をやっているだけなのに……
どうして、同じものを好きな奴が彼女を否定するのだろう。
なんで、彼女のステージを盛り上げたり、他の奴を応援して送り出す立場の奴が彼女を傷つけるのだろう。
「傑作?本当に救いようのない奴らだな?ねぇ?君達はあの子の凄さがわからないの?あんな男の中で頑張って踊ってる彼女を見て何も思わなかったの?」
「はぁ?」
「なら、音楽を辞めた方がいいよ……だって、素人の僕にだって、わかったんだからね……」
ソクジンはそう言い放ち、廊下にいる彼女を呼ぶ。
「サユ!行こう……」
彼女は目を丸くしているが、彼は去り際にもう一度、彼等の方をふり向いた。
「彼女の努力もわかんない奴が……彼女の凄さをわかんない奴が………嫌いな奴を自分の都合の悪い奴を追い出して、逃げるような奴が、登れるほど、この世界は甘くないと、思うよ……………」