第1章 誤報のご褒美〈三好 一成〉
きゅん。
さっきの胸の痛みとは違った、キュッと締め付けられるような感覚を、また心臓の辺りで感じた。これは、もしかしなくても、アレかもしれない。気付くのが遅すぎる。
「からかわないでよ」
だからと言って、そう簡単に素直になれるわねじゃないから、今の気持ちが言えない。
「本気だよ。だから、付き合ってほしい」
そう言った彼の目は、真っ直ぐと私を捉えていて、からかってなんかいないってわかった。それがどうしようもなく嬉しくて、さらに顔に熱が集まった。
「私も、たぶん、三好のこと…好き、なんだと思う。だから、よろ、」
よろしくお願いします。
そう言おうとした口を、唇で塞がれた。と言うより、食べられた、の方が近いかもしれない。それで、離れてそっと頭を撫でてくれた。
気が付かなかったけど、いつの間にか雨は止んでた。日差しがキラキラしてて、最高に綺麗な空だ。
たぶんこれは、私の気持ちの問題なんだろうけど。
「今、めちゃくちゃ幸せかも…」
「オレも。やっぱオレたち以心伝心しちゃってる!?一心同体?」
「そんなのやだよ」
ふと、また思い出した昔の記憶。
「オレのことは一成って呼んでねん☆」ってバッチリなウインクと共に言われたけど、あの頃は恥ずかしくて頑なに拒否してた。でも、今なら多少の恥ずかしさはあれど、呼べる気がする。というか、呼びたい。
「一成とは、別々の気持ちを共有したいから」
「! ッも〜、めちゃ嬉しい!」
「それはよかった」
私が微笑むと、一成も嬉しそうに笑ってくれた。
信じたときに限って、雨に降られる。
こんなサプライズはいらなかった。
だけど、たまには誤報も、いいかもしれない。
おわり