第1章 誤報のご褒美〈三好 一成〉
また変なことを考え始めてしまった。ぐりぐりと額を押しつけて、恥ずかしくてまた熱が集まってきた顔を必死に隠そうとするけど、全然熱が引かない。それよりも、三好の匂いに気が取られる。
「なんか、安心する…三好の匂い」
するとすぐに、顔を上に向けられて、ふにっとした感触が、唇に当たって離れた。一瞬だったけど、三好の綺麗な顔がドアップで映った。
「えっ、」
あまりに突然なことで、ピシリと固まって動けずにいると、私の様子にハッとした彼が、慌てて謝罪してきた。
「あ、ご、ごめん!可愛いと思ったら、つい体が勝手に…マジごめん!」
理由はわからないけど、心が浮ついたのと同時に、心臓の辺りがチクッとした。そんなに必死に謝るなんて、雰囲気に流されてついしちゃっただけみたいで、嫌だ。
「謝らないでよ…」
「え?」
「今のが間違いだったみたいじゃん」
「そんなこと!って、あ、」
「! ご、ごめん。また変なこと言った、ほんと忘れて」
恥ずかしすぎる。さっきから、自ら墓穴掘りすぎじゃないか。学習能力なさすぎじゃないか。
私が急いで撤回すると、三好が更に強く抱きしめてきた。
「それはムリ!嬉しかったから。さっきもオレとのこと、覚えててくれて、大好きって言ってくれて」
「それは………無意識で…」
「マジ?…それはそれでめちゃ嬉しいんだけど」
「なんでよ」
無意識で言われた言葉が嬉しいなんて、おかしいんじゃないの。普通は心がこもった言葉の方が嬉しいんじゃないの。
そう思ったのも束の間、三好は、私にとってはかなりの爆弾発言を投下した。
「だって、無意識にオレのこと好きって言ったってことっしょ?それって、本心ってことじゃん?」
よくよく考えてみれば、確かにそうだ。無意識ってことは、私かなりヤバいんじゃ?
「オレも、大好きだからさ。高校生のときから」