第1章 オレ ダケヲ 見テヨ。
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覚くんが来ない。
《 あと少しだから〜!ごめん! 》
《 大丈夫、待ってるよ 》
こんなやり取りをしたのが10分前。
仕事…押してるのかな。
もしかして事故…?
いてもたってもいられなくて電話を掛ける。
繋がらない…
本当に事故だったらどうしよう…
「ん〜〜!お待たせゆあちゃん♡」
「さッ、覚くん!」
ガバっと背中に抱きついてきたのは
今まで待っていた愛しの彼だった。
「アララ、電話ごめんね」
「全然大丈夫、来なくて心配したから…」
「もー!優しいねゆあちゃん!
チューしてあげたくなっちゃう!」
「覚くん…ここ、外…」
「うんうん、ゆあちゃんは
気にするもんねー、我慢するよ」
———家に帰ったら楽しみだね。
耳元で囁いてくる。
期待してる自分、それに気づく彼。
そんな私を大好きなのだろう彼は
『今食べちゃいたいけどね』とだけ
言っておデコにキスをしてきた。
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