【降谷零】意地悪すぎだよ!降谷さんっ!!~翻弄しすぎの上司~
第15章 忘れ物
翌朝、雅が目覚めた時にはすでに降谷の姿はそこに無かった。代わりにあったのは、1枚のメモ。
『冷蔵庫の中の食材、自由に使って構わない。しっかりと朝食は摂る様に。僕はポアロに行っているから。』
その味気なくとも取れるメモを見て雅はふぅ…っとため息を吐いていた。そして降谷にラインを入れるべく携帯をだし、メッセージを入れる。すると、少し離れた所で音が鳴る。
「…まさか……」
その音のする方へと行ってみると、携帯が大人しく降谷の帰りを待つようにそこにあった。
(これは…どうするか…)
色々と考えた雅。それでもいくら考えても結論はいたってシンプルな物しか出てこなかった。そう、『ポアロに届ける』という結論……それでも、行っていいものか不安になった。
(どうしたものか……風見さんに頼むのもなぁ…)
そう思っていた。普通ならば届けた所で全く問題は無い。そう…普通であれば…言ってしまえば降谷も雅もポアロでは偽名を使っているのと同じ事になっている。降谷=安室だし、雅もまた『櫻井ありす』と言った名前を使う様に仕向けられた。公安としての立場、存在を隠すべく…
「そぉだ!」
そうして雅はメールを入れ始める。カチカチと入れ終わると送信ボタンを押した。しかし、すぐ目の前でヴヴっと響く……
(何やってんだろう…)
そう、雅が入れた相手は何故か降谷の元。ポアロに行っていい?と入れたものの、当然ながら自身の目の前にある携帯に届くだけ…少し考えればすぐに解る事だった。げんなりしながらも、仕方なく着替えをして、降谷の携帯も持ち、雅は貰っている合鍵で鍵をかい、ポアロへと向かっていった。手ぶらで行くのも……そう思い、近くのお店に向かい手土産を持って行く事にした。
「なにがいいかなぁ…でも大抵は作っちゃうだろうし…それに行くところは喫茶店だし…」
考えながら、いろいろ見て回る。頭を悩ませながらも、甘い匂いに誘われてふと目に留まったのはたいやきだった。
「これにしよっと!」
そう呟いて雅はたい焼きを仕入れていく。粒あんの王道の物から、クリーム・チョコ・ベーコンマヨ・明太ポテト……色々な味を2枚ずつ、王道粒あんとクリームは4枚ずつ購入した。