【降谷零】意地悪すぎだよ!降谷さんっ!!~翻弄しすぎの上司~
第11章 名前呼び
昆布茶を一口飲み、降谷は話し始めた。
「さっきの風見の話…」
「……ッ・・はい」
「あれなんだが…」
「……」
だめだ…きっと悟られてる…そう思った雅はコトリとマグカップを置いて俯きながら降谷に話し始めた。
「あの…すみません…」
「何がだ?」
「あれ…あの話…」
「うん。」
「……本当は…その…」
「…うん」
「私…何です」
「気付いていた。」
「……ッッ」
「君があれほど風見の事と言ってもペラペラと話すとは思えない。どちらかと言えば隠す方だろ。全く。風見に何を話してるかと思えば…」
「…ごめんなさい」
「そしてなぜ謝る」
「……だって…」
「僕の気持ちはあの時言った、あれ以上でも以下でもない。」
「……あの」
「でも、その前に1つ聞きたいんだが?」
そう言うとカップをコトリと置き、上から雅を見下ろすように腰をかがめた降谷。
「なんで風見の事はすぐに『裕也』と呼べるのにだ。僕の事になると冷蔵庫だ、カフェインレスだに変わるんだ?」
「……そ…れは…」
「それは?」
「だって…」
「答えになっていない」
「……どう呼んでいいか…解らない」
「…ハァ、意味が解らない。風見を名前で呼ぶのに『裕也』なら僕の事は『零』でいいだろう?」
「……」
突如いつもの妄想が頭をよぎる…それも突然すぎる展開だった。
「だって…前にも名前で…呼ばれた女性が居るって…」
「それは僕が小学生の頃の先生の話だ。」
「しょ…うがくせい?」
「あぁ。」
「そんな事聞いて無い」
「聞かれていないからね」
「……」
「今の君の傷をえぐるかも知れないが、僕の初恋だった先生だ。」
「……ッッ」
「でも、それは過去の思い出であって、今の恋人は雅だろう?何を躊躇う」
「……」
「それとも?雅の中では僕の名前を呼ぶことは恥ずかしいという訳か?」
「違う…」
「なら、呼びたいように呼べばいい…」
そういうとそっと雅の頬を包み込み、降谷はそっと親指で唇をなぞる。
「呼んで…いいの?」
「あぁ。喜んで」
「……降谷さん警視正なのに?」
「…フ、恋人に上司だ部下だの関係が成立するとは初めて知ったな」
「…ッッ」
俯きながら雅は小さく届くかどうかの声でそっと初めて呟いた。
『……零…さん』
と…・・・