第12章 キツネアザミと矛盾の芽
「そういや中也さんて、いつの間にかリアちゃんの上司さんだったけど、ほんといつの間に??どこで見つけてきたのリアちゃん」
『向こうが見つけたの』
「そういや元々幼なじみ?みたいな感じなんだっけ?」
『行く先々にたまたまこの人がいただけ』
ええ〜何それロマンチック、などとさながら女子トークのような盛り上がり方だが相手は反ノ塚である。
「そりゃあ自殺しようとしてる美人がいたら止めもするだろ」
「自殺!!?」
ガタッと席を立った白鬼院の方は向かずに、中也さん、とにっこり笑顔で抗議された。
「ええ、共通認識だと思ってたんだが」
『あのね、凜々蝶ちゃんは言っても今年の春から妖館に来たばっかなんだから』
どっちが過保護だよ、まったく。
「異能抗争の真っ只中とか?戦闘中とかに来てあわよくば流れ弾で死のうとする美人の人魚がいたんだよなあ??」
『美人のは余計』
「一番重要だろむしろ」
ぷい、と顔を逸らされたが事実である、俺は悪くない。
「そんで昨年か、作戦中に地上を歩いてりゃ見覚えのある髪色の美人が上から落ちてきたんだよ。条件反射で受け止めるだろそりゃ」
「えっ、中也さんが助けてくれたんだ?昨年って言ったら…………ああー、なるほど“あれ”か」
ぎくりと反応したリアは反ノ塚の話を知らないふりをしているが、よっぽど本人的に堪えていたのは事実であろう。
前任のシークレットサービスの件だ。
「飛び降りたとかお兄さん聞いてなかったんだけどリアちゃん?」
『ちょっと度胸試ししてただけ』
「おまえはうちに来てからも毎日自殺未遂ばっかしてたけどな」
『誰かさんが邪魔するから未遂になっただけでしょ』
「そりゃよかった」
『あっち行ってって行っても全然ほっといてくれないし』
「構ってないとおまえすぐ寂しがるじゃん」
『ほんとは巻き込むつもり無かったのに』
「「「巻き込む??」」」
ハッとしてから、けろりと顔色を変えて取り繕う。
『中也さん先祖返りじゃないから』
それを言ったらマーク君もか、と上手く話を逸らしたようだが、勘のいい奴らは何かを感じているだろう。
「その割には先祖返りより強そうだけどね」
『脳筋』
「ちょっと待てなんで今脳筋っつった」
『ほんとのことだもん』
否定は出来ないが懐かしささえある、このようなやり取りは。