第11章 珪線石の足音
『こ、こんなに食べたの久しぶり……もう入らない』
「逆によくそこまで入ったよ、偉いじゃねえかちゃんと食って。デザートはいるかあ?」
『……そんなのまで食べていいの?』
「いいぜ?フルーツとアイスでミニパフェにでもして……って、量多い方がいい?食べられる?」
『!?い、いえ……あ、甘いのはそこまで食べられないから』
ふうん?と反応しつつ盛り付けたそれに苺をトッピングしてやると、頬がほんのり染まる。
ほんと分かりやすいなこいつ。
「苺好きか?」
『ううん、中也さんが好きだから嬉しくて』
「……へえ?」
『………………えっ??』
思考をどこかに捨ててしまったらしいお嬢さんを撫でながら可愛がっているうちに、完食される。
清々しいほどの食いっぷりだ、マジで食材用意してて良かったな。
いつどこでこいつを拾って帰ることになるか分からなかったし。
「じゃあとっとと風呂入ってきちまえ、ちゃんと肩まで浸かってあったまってくるんだぞ?」
『えっ、中也さん一緒じゃないの』
「お嬢さん、俺一応成人済みの男なんですけど」
『……あっ、分かった、ちゃんと責任取って御奉仕す「ストップだリアちゃん、そういうことは絶対にしませんって約束だったな?」じゃあなんで?』
「紳士として当然の『中也さんずっと一緒って言ってた』……そんなに入りてえの?」
警戒心云々以前の問題だなこれは。
『…………おい、てく?』
いいえ?と抱き上げて脱衣所に連れていく。
御所望されてしまったので衣服に手をかけさせていただき、そのまま……脱がせて、無理矢理バスタオルを巻いて。
「見てねえから」
『見たくなかった?』
「誤解すんな、めちゃくちゃ見たかったよ」
『……そっか』
嬉しそうにしやがって。
浴室に入って湯船に浸からせると、溶けたようにリラックスしてしまう。
「泡風呂とか興味ある?」
『あわあわ!?』
「おー、いいリアクション。入れてやろうな」
入浴剤を入れて泡だらけにさせれば、五歳児のようにはしゃいで楽しそう。
ああ、首領曰く精神年齢はそのくらいだったか。
精神統一という名の修行は最早拷問のようだったが、煩悩を消し去り続けて無事に風呂という難関を突破して……髪を乾かしてやっているうちに、そいつは寝た。
まったく、こっちの気も知らないですやすやと。