第11章 珪線石の足音
「リアちゃんよ、立っててしんどくないのか?」
『中也さんが異能で立たせてくれてるもん』
おまえが調理中に引っ付いて離れたがらないんだからそりゃあそうもするさ、俺だぞ。
『!もしかしてカレー??』
「おっ、よく分かったな?まだトマトしか準備してねえのに」
『こないだバターチキンカレーが美味しく出来たって広津さんと話してたの聞い……たのを聞いたのを聞いた』
「俺のことを盗聴してるリアちゃんが直接聞いたわけじゃなかったのか?」
『リア別に中原さんにそんなに興味津々じゃないもん』
じゃあ俺から離れないその甘えたはいったい何なんでしょうか、ええ。
「おまえカレー好き?」
『り、リアカレーすき』
「辛い方が好きとかは『べつに』……辛いの苦手?食べやすいように作るけど」
『苦……い、いや平気だし。リア幹部より辛いの余裕で「リアちゃん、何口が好き?」…………中くらいのやつ』
了解、と撫でれば余計にぴっとりとくっつかれた。
好きなんじゃねえか。
「まあ嫌いって奴も少ないだろうが、カレー好きだったとは意外だな」
『えっ、なんで?……あ、なんでですか?』
「なんでいきなり丁寧になってんの?素でいいよおまえは」
少し反応に困ったのだろう、照れたような素振りを見せつつ、恥ずかしそうに教えてくれる。
『……その、…………テレビとかでよくやってるし』
「テレビ?」
『みんなお家で作ってもらうんでしょう?』
その発言に手を止めて、彼女に向き直って目線を合わせるべくしゃがむ。
「おまえ……そういうのが、好きなのか。そうかそうか、強請らせようとして悪かった、そういうことなら任せろ。うんと美味いもん食わせてやるよ」
『な、なに急に』
「他には食べてみたいもんとかある?」
『ええ……?えっと……その…………た、たまごやき』
チョイスが可愛らしすぎて思わず抱きしめて撫でくりまわした。
「他には?」
『ま、まだ言うの??』
「いくらでも言ってくれよ、いくらでも作るから」
『…………たこさんウインナーってやつ』
「おまえほんと可愛いな???」
『今のはほんとになんで???』
たこさんウインナー知らなかったのか、そうかそうか。
なでこなでことベタベタに甘やかして料理を再開。
定期的に味見と称して餌付けしながら、“世間一般の家庭料理”を作り上げた。