第11章 珪線石の足音
飯で釣れると分かっていれば怖いものは無い。
そう、飯で連れてしまうのだ。
「これスリッパな?苦手なら素足でも構わねえけど好きに……ああ、いや、やっぱり身体冷やしたらいけねぇから履いておけ」
『!は、はい』
なぜだろう、リアに任せて立ち去ることが出来なかった。
困らせてしまうと思ったのだろうか。
「入っていいよ、とっとと楽にしてろ病人は」
『……お邪魔、します』
「おー」
手を洗ってきた彼女をソファーに座らせ、まずは腹ごしらえに軽食を食べてもらうのだが……背中に突き刺さる視線に振り向いてそちらに戻り、しゃがむ。
「リアちゃん、俺に言いたいことは我慢しちゃダメだ。言ってみ?」
『……なんでもないもん』
「なんでもなくないだろ、見れば分かる」
『…………中也さんは、食べないのかなと思って』
「一緒に食べようなあああ???そっかそっか、そうだよなあ俺と一緒がいいよなあそりゃ!!」
向かい合わせになるように着席するとぁ、と声を漏らされてしまって、まさかとは思いつつ隣に座りなおせば、ちょん、と可愛らしく両腕をこちらに回して抱きついてくる。
えっ、何だそれ可愛いなおい。
「ここなら寂しくない?」
『……寂しいとか言ってないですけど』
「ははっ、可愛い奴」
また言ってる、なんて相手にもしてくれないけれど、我慢されるよかよっぽどいい。
少しだけ食べたら作るのに付き合ってもらおう、しばらく本当に離れちゃいけなさそうだ、こいつが自殺しかねない。
「つまみみたいなもんばっかで悪いな、後でちゃんと栄養あるもん作ってやるからなぁ」
『?リア中也さんのご飯すき…………あっ、えっと、なんでも食べられます』
「良い子のリアちゃんはあーんしようか」
素直にお口を開けた愛娘に食べさせ、餌付けする。
絵面はやばいが仕方あるまい、この子が可愛いのが悪い。
「美味い?」
『うまい……♡』
二人きりだとやっぱり素直である、なんてことをしてくれてしまうんだ。
美味いもん食ったらそんな顔するんだなぁ、ガキらしいところがあって安心したよ俺は。
「今日何食いたい?」
『中也さんは何作るのが好き?』
「……おまえが喜ぶもん」
『なにそれ素敵』
「なんでそんな可愛いことすんの???」
小首を傾げられてたまらずよちよち撫でてしまう。
飼いてぇこいつ……