第11章 珪線石の足音
どこぞの太宰に聞いたようなレパートリーの悪口の数々である、こいつマジでどうした突然。
『に、人相悪い』
「おー」
『酒癖悪い……へ、ヘビースモーカー』
「他には?」
『脳筋、パワハラ、セクハラ幹部』
「一応言っとくが、お前にじゃれつかれた程度で嫌に思わねぇからな俺は」
『変態!!!』
いや今のはなんでだよ。
「あのなぁ、もう分かってるから。おまえ俺に申し訳ないとか思ってわざと怒らせてやめさせようとしてるだろ、無理だから諦めろ」
『してないもんそんなこと』
「じゃあ問題無いな、俺がめいいっぱい養ってやるからなぁリア〜♪」
『首領に通報「悪いが先に許可は取ってあるぜ」へ、変た……!り、りあ中也さんのストーキングとかしてる』
おっと、まさかの方向転換ときた。
その路線でいけば俺が嫌がるとでも思ってんのかね。
「おー、そんで?」
『声録音してるし盗撮してるし、全然GPSとかつけてるし』
「そんで??」
『送れてないお手紙いっぱい溜まっ……てないし』
「なんの手紙だよ?直接言やぁいいのに」
『だ、だって中也さんかっこいいから目の前にいたら緊張するし』
おーい、本音漏れてんぞ。
『い、いっぱい大好きなとこ書いちゃったしあんなの読まれたら恥ずかしい……』
「話聞いてるだけだとラブレターにしか聞こえねぇけど」
『いっつも思ったこと書いてるだけで……それはいいのよそれは!!』
俺的にはだいぶ良くなかったような気がしますがお嬢さん。
「チャットでもいいのに?」
『そ、そんな社用チャットとかなんか味気ないし……特別感全然なくてさみし…………なんでもないよ?』
「手紙な?持ってきてみ、全部読むから」
『全部!?』
「おー、返事くらいしてやりてえじゃん、そんな健気なことされてたら」
『…………数ヶ月分ありますけど』
「ざっと何枚くらい?十何枚とか?」
『リア毎日中也さんのこと書いてる』
「OKリアちゃん、箱か何かに詰めて全部持ってこようか」
想像以上にだいぶ俺のこと好きすぎた、大丈夫かそれは。
『で、でも本当に言えないようなこと書いちゃって』
「いいよ、仕事じゃねえんだし……じゃあ、それ俺に読ませてくれるのが対価ってことにしといて。それならいい?」
『リアまだ認めてませんから』
「ん?俺と一緒に飯食ってくれない?」