第11章 珪線石の足音
『いいじゃないケチ幹部』
「誰がケチだ」
『そんなだから身長伸びないんですよ』
「……おちょくってもダメだぞ、とりあえずその手離してこっちに戻れ、幹部命令だ」
『中原さん』
「ダメだ、戻れ」
二人、四人、八人……気付けば何十人になっているだろうか。
増えていく分身がそんな規模にまでなるだなんて聞いてはいなかったが、それだけでも恐怖で相手は意識を手放し、その場で動かなくなってしまう程である。
「だーめだ、いい子だから」
『……別にいい子じゃなくていいし』
「リアちゃん、俺のお願い聞いてくれねえか?」
ポンッ、と可愛らしい音で煙を出して消えた分身。
それから毒の成分はもういいらしく、膜がなくなって……そいつが俺の腕の中に戻ってきた。
「おー、よしよし。ありがとうなぁ怒ってくれて」
『…………あーあ、幹部のせいで動けない。もう動けない自分で立てないし歩けない』
「いきなりどうした」
『首領への報告も一人で行けないし処分するにしても動けない、ああ困ったなあ』
わざとらしい猿芝居に従って抱き上げ、そのまま首領室へ訪れると、まさかの首領本人を前にしても俺の腕から離れるつもりはないらしくそのまま失礼させていただくこととなる。
「すみません、さっきからずっと拗ねてるみたいで」
「あっはっは!そりゃあ嫌だったろうねえ?リアちゃんものすごい我慢したんじゃないの?嫌だったでしょ〜中也君殺そうとした相手生かしておくなんて」
『とりあえずこれ、八班と首謀者の女と、全員の家族の現住所と今の居所……からこの後十二時間分の動きの予測です。それから奴らのポートマフィア外での別拠点はこっちに。トラップもあるので描き出してみましたけど、これやっぱリアが行くのが早いんじゃないかなと思っ____』
「うん、中也君に運んでもらわなくちゃ動けないくらいに体力消耗しちゃった子はだぁめ♪」
『してません』
「じゃあ降ろしてもらってみて」
降ろして、と言いたげな目でこちらを向かれるので、仰せのままに床に降ろして手を離す。
するとそのまま膝を崩して倒れ込むので急いで支えるが、腰が抜けているどころの力の入らなさではなさそうだ。
『ぶ、分身なら問題無いし』
「余計に体力消耗するでしょ、何したのほんと。燃費悪いんだから無茶しないの」
『だって中也さんに毒吸わせたくなくて』