第11章 珪線石の足音
『しかも第八班ってあれでしょう?いつもいつもうちの弾丸を横領して横流ししてる裏切り者の集団でしょう?』
「は?」
「なッ!!?」
『私が知らないわけないじゃない、首領がしばらく泳がせておきなさいって言うから知らないふりしててあげただけなのに……なんでよりによってこの人に手出そうとしたの?ねえ、どうして??』
段々とその場の空気が冷えていくような心地がする。
やべぇ、こいつキレてるな。
「……おまえを引きずり下ろすには先に護衛を外すのが先決だと『誰の指示?』言うわけがないだろう」
『…………へえ、そっか、下級構成員の野島 志保さんね?そっかそっか、あなた達恋人だったんだ??彼女に告白されて良かったねえ、“昨日の生姜焼き”は美味しかった?』
なんの話しをしているのかと、そう思ったが、見ると目の前の男は冷や汗を流して顔を青ざめさせており、肝心のリアはというと……目が、光っているような。
「な、んで……そんなことまで」
『リア、“視たら”全部分かるから…………ねえ、なんでリアの中也さんに毒なんか吸わせようとしたの?』
俺の腕から離れて歩き出すそいつにおい、と声をかけるも、止まる気配は無い。
が、恐らく毒を弾いてくれていると思わしき膜を通過しようとするそいつにはさすがに焦って手を伸ばすのに、それを振り払ってソファに押され、簡単に外へと出て行かれてしまって。
「!!“吸った”な?」
『……ああごめん、あなたは見ただけじゃ分からないものね?…………リアねえ、毒とか効かないから♡』
待て、そんな話は俺ですら聞いたことがないぞお嬢さん。
「は……?」
『そんなので死ねるなら自殺するのも苦労してないのよねえ、飲んで楽になれるんなら一番簡単じゃない?私基本的にこの世に未練とか執着とか無いし?殺してくれるんなら大歓迎なんだけど…………もう一回聞こうか。誰の目の前であの人に手、出してんの?』
震え上がるそいつは毒に犯されつつあるのか、それとも目の前の女に恐怖しているだけなのか。
『ごめんなさい上司様、リアちょっと野暮用出来ちゃった♪』
「……許可しねぇぞ、俺と代われ」
『嫌ですけど?』
にこりと振り向かれるが微塵も朗らかな空気じゃねえ、完全に殺す気満々じゃねえかこいつ。
まさか俺が巻き込まれただけでそこまで怒るなんて思わねぇだろうが。