第11章 珪線石の足音
手袋を付けたままだったので能力を制御して何とか手を取り、抱えあげてからソファーに座らされる。
「はいよ、腰痛くしてないか?」
『痛かったらどうなの』
「痛かったらそれなりに手当てしなくちゃだろ?おまえは女の子なんだから」
『……あなたがここに座ってくれたらマシになりそうな気がします』
は?と言いたげな顔をしてフリーズした上司様は、動く気配が無い。
さすがに嫌がられたかと思ってなんでもない、と顔を背けると、焦ったように隣に座って肩を抱き寄せられた。
「そんなに甘やかしてほしいんならそう言えよ、俺はその辺察しが良い方じゃねえから……そんなに嫌だったのか?」
『ふんだ』
「ほんと仕事好きだなおまえ」
『中原幹部キライ』
「あーあー分かった、俺な?俺がついてなかったのが嫌だったんだな??ごめんって」
『……今度から任務全部一緒に連れてってくれるなら許します』
「状況にもよるが善処するよ」
『ちゅうやさん今日はリアのとこにいて』
どんな顔をしてるんだろう……さすがに気持ち悪がられたかな。
「おう、最初からそのつもりだよ。おまえ俺と離れてたせいか寝不足みたいだし?前より痩せてるし、飯食わして寝かすから」
『な、なにそれ、ほんとに仕事終わっても一緒にいてくれるみたいな「家来ていいよ、襲わねぇし」……あ、あしたは?』
「いつでもどうぞ、お嬢さん」
『…………二ヶ月置いてかれたんですからね』
「悪かったって、まさかそんなに寂しがるとは思ってなかったんだよ」
『は?……え、…………さ、さみしがってない』
弁明するべく後ろを振り向くと、目を丸くさせて頭に触れられる。
「どの辺が?」
『さみしいとか思ってない……思ってないから。大丈夫だもん』
「リア、おまえちょっと落ち着____」
『そんなわけないじゃないですか、だって大丈夫だもん。別にいつものことだし、さみしいわけ「リアちゃん、もう一度聞くぞ?寂しかった?」……』
それを認めると、何かが崩れてしまいそうな気がする。
いいのかな、そんな名前を付けてしまって。
だって私、ずっとそうじゃないって言い聞かせて生きてきたのに。
『大丈夫だった』
「……嫌だった?」
『…………置いてっちゃ、やだった』
やだ、声震えてる。
こんなつもりじゃなかったのに。
「それを寂しいっていうんだよ」