第11章 珪線石の足音
「何してんだよ、とりあえずソファーに……立てるか?」
『じ、自分で立てます』
「じゃあ立ってみろよ」
『……あ、あああ後で立つの』
ぷっ、と笑われて手を差し伸べられるが、私にそれを取る勇気は無い。
『なんですかそれ、バカにしてますか』
「してねぇよ、立たせてやるから」
『……しゃがんでください』
不思議そうな顔をしつつしゃがんでくれたので、これ以上変に良くされないように、失礼ながらその頭に両手を置かせてもらって力を____
「いでてててててて!!?!?ッおい、何してやが……っ、立てねえんだろ!!?諦めろって、痛ェ!!!!」
『か、幹部のせいで腰抜けた!!責任取ってとっとと出てって下さいここから!お疲れ様です!!!』
「なんで俺が上がるんだよ、こんなにまだ仕事があるだろうが」
『うるさい』
「てめっ、一応上司で『せ、せくはら』セクハラだあ!!?!?」
『おおお女の子のほっぺ触るとかセクハラじゃないですか!そういうのはき……き、きすする時にするやつ、なのに』
ブッ、と盛大に吹き出して顔を逸らされる。
「おまっ……何、そんなびっくりしたのかさっきのが」
『だってちゅうやさんが顔近かったから』
「あー、うん、そうか。キスされると思ったかすまん、そりゃ怖かったな悪い悪い」
『なんで撫でてるの痴漢!!』
「ちゃんと餓鬼らしいところがあってホッとしてんだよ、おまえはそのまま健やかに育てよ」
どの立場の人間の台詞だそれは、つい先日まで二ヶ月間も私の事放置していったくせに。
そう、放置して……
『……だ、誰か他の人にキスしたの??』
「待て、なんでそうなる」
『だってなんか慣れて……それにリアと一緒にいなくて二ヶ月も解放されてたんならそういう人とあの、その、そういう事とかになったり「いねぇから」リアより良い部下見つけたって言ってもういらなくなっちゃうんだもん』
「ならねぇよ、おまえより優秀な人材がそんなにいてたまるか」
『じゃあリアより好きな人出来てない……?』
「おーおー、出来てな…………あの、白縹さん??」
よそよそしい呼び方に胸がちくりとした。
『白縹さん……』
「ああうん、ごめんって。悪かったよリア」
『りあ?』
ちらりと覗いてみると、押し黙ってから頬を赤くさせて、呼んでくれた。
「リアちゃんが一番です」