第11章 珪線石の足音
あまりにも真剣に聞かれてしまうものだから、どう説明しようか迷う。
言ってしまう?いや、でもこの人は私の事ただの一般人だと思ってるでしょうし……異能力だと言えば納得してくれるかな。
…………ああ、でも私、この人には嘘つきたくないなぁ。
『……あ、の……誰にも、言わない?』
「!おまえがそうしてほしいなら、約束する」
『…………えっと』
口で言うよりは、見てもらった方が早いだろうか。
いいや、口で言うような度胸が無いだけだ。
「……………………あ、??……なッ!!?」
目の前で、試しに分身を一つ、鏡写しになるように作ってみる。
落ち着け、変化しなければ大丈夫……集中しろ。
『どっちが本物か分かりますか?』
「見た目だけじゃ分からねぇだろ、こんなの」
『じゃあ次は“こう”してみますね』
分身の見た目を変化させ、今度は目の前の……私の最愛の上司様の姿をかたちどると、彼は目を見開かせて黙りこくる。
『…………これなら、なんでも悪さ出来ちゃえると思いません?』
「加えておまえの悪知恵があればな」
なんで黙ってた、と問われるのに、顔を伏せて思いの丈を淡々と述べる。
『聞かれなかったから』
「責めてるわけじゃねえ、もう一度聞く。なんで、言えなかった?」
『……幹部に、嫌がられると思ったから』
「なんで」
『私のことあんまりよく思ってないの知ってる……それにこんな力持ってたら、組織で何してるか分からない怪しい奴だって思われても仕方な____』
唇に何かが触れて、黙らされた。
……何これ……指??
「まず大前提な?俺はおまえをよく思ってないことないから……信用してる、分かってんだろ?」
『…………そんなふうにしてもらえるようなことしてない』
「十分してるだろ、ちゃんと言いつけ守って自殺するのやめてるんだから」
それの、何が信頼の礎になるというのだろう。
「俺が知りたかったのは、おまえが無茶したり危険なことしてるの黙ってたりしてないかってことだよ。心配してただけだ」
『へ、』
頭に触れられて、また黙った。
読むな、読むな、読むな読むな読むな。
「……?どっか体調悪いか?」
えっ、と声を出してしまったところで頬に触れられたのに気付いて、腰を抜かしてしまった。
あ、あれ、今ほっぺ触っ……??
『?♡……???♡』
「ええ……?」