第11章 珪線石の足音
「具合は?」
『もう大丈夫』
「なるほど微熱ね、とりあえず能力は使ってないな?偉いぞリア〜♪」
『ほんとなんでそんな分かるんですかあなた』
照れたように言い、抱きついてくる。
おーおー、今日も可愛いなぁおまえは。
『か、カゲ様はいつまでいるの?あと一時間くらい……??』
ん?
「リアちゃん??」
『あ、いや、べつに三十分でも「リアちゃん、なぜ私がそんな時間で居なくなると思うんだ?」だってここ、今カルタも凜々蝶ちゃんも……いないし』
「それと滞在時間に何の関係が?」
『だってそっちの方がいいでしょう?』
「私はおまえが熱を出していなければそもそも戻ってすらいない。おまえのためだけにここにいるのだぞ?」
ぱっと顔を上げてから、そっか、と朝食を食べ始め、尻尾が振れる。
「とりあえず、熱が完全に下がりきるまではオフだからな?俺が横で仕事してても、おまえは楽にしてればいいから」
『……うん』
お??
「まあ気になるんなら見てもいいけどな?安静にしてるんなら問題無ぇ」
『また一緒に寝ながらしてくれる?』
「おまえほんと可愛いな???」
『いっぱい中也さんといたいもん』
可愛い、というよりは切実だ。
未来の問題が解決していない以上は仕方の無いことなのだろうが。
「蜻蛉はどうする?」
「私はそろそろこのあたりで調べたいことがあるからな、今日はここを拠点にさせてもらっても?」
「調べもの?構わねぇが、手前もあんま危ねぇことすんじゃねえぞ」
先祖返りなんだから。
不思議そうな顔をした後、意外とでも言いたげな声でそいつは言った。
「中也殿は、もしかして結構懐が広いのか?」
『!?あ、あげないから!』
「おお!?どうしたどうした、あげられねぇよ?大丈夫だぞ??」
『中也さんが誰彼構わず優しくするから』
「俺!!?俺はリアちゃんの俺です!!」
『わ、分かってるならいいけど……中也さんのこと一番好きなのリアなんだからね!?』
「おまえは今日も銀河一かわいいよ」
分かってない!!と子供みたいに納得しない彼女についつい笑ってしまう。
分かってるよ。
「他の奴にはこんなことしねぇし」
『当たり前です』
「後で珈琲入れてもらっていい?仕事のお供に」
『……いいよ?……♡』
頼み事されるだけでこんなに機嫌治っちまうんだもんな。