第11章 珪線石の足音
「OKわかった、一回落ち着け傍にいるから!」
『はぃ、』
「…薬の効きめは?」
『ちゅうやさんすき』
「体温どんな感じ?」
きょと、とした顔をしてから煙に包まれ、元の身体に戻って俺にそれをあずけてくる。
『……ふつう』
「しんどいのちょっとはマシか?」
『うん』
「なんかちょっと拗ねてねえ…?」
『…雑炊もっと』
姿を戻したところで食欲も戻ってきたのだろうか。
仰せのままにれんげにすくって食べさせてやると、もくもくと食べ進めるようになった。
おお、これはいい兆しなのではなかろうか。
『そうくんはスープ』
「はい、ただいま」
『治さんはちゅ「ちょっっっと待てそれはダメだ」…ほっぺもダメなの?』
「………一回だけな」
ちゅぅ、と可愛らしく隣の木偶の坊にキスしてやがるお嬢さんを、数秒待ってからべりっと引き剥がして抱き寄せた。
それ以上はパパ的にアウトだこのやろう。
と、彼女がふと俺の顔に両手をそっと添えてくるので、見つめ合う形になる。
その刹那、リアの手に誘導される形で…顔面が、柔らかい感触にふにゅん、と押し付けられた。
……………は????
「〜〜〜〜ッッッ!!、!?!!、?…っちょ、リア…!!?な、ななななな何しやがる!!!!」
『だってちゅうやさんがかまってくんないから』
しょん、とした様子に負けそうになるけれど、いや、おかしいおかしい。
寝惚けてる時でもここまでしねえだろお前。
「お、俺がかまってない?どうかまってほしかったんだ??」
『いっぱいなかよしさんしてよ』
野郎共が揃って一斉に吹き出し、顔を背けた。
だが俺は知っている、こういう時のこいつはそういう意味の言葉をこんな言い回しで言えるほど余裕がある性格ではない。
「…えっと、具体的には」
『もっと抱っこ…!』
「「「「「あっ、そっち!!!」」」」」
よぉしよしよし、と盛大に甘やかしを開始した。
そうか、物理的な密着度が足りなかったか、そうかそうかぁ。
日頃寝かしつける時より少し強く抱きしめて撫で、あやすうちにころっと寝息を立ててしまった彼女に周りを含めて驚きつつ、とりあえずは一安心した。
「いきなり甘えたになったねえ、なんの成分入ってるんだろうこの薬」
「恐らく少し元気になって甘える余裕が出来たのかと…兄としては些か不安にさせられましたが」