第11章 珪線石の足音
「もういいのか?」
『う、うん』
「…熱酷くなってねえ?やっぱり薬飲んどこうぜ」
『……』
「蜻蛉ならこっち向かってるだろ、大丈夫だから」
本当に?
カゲ様こっちに向かってる??
そう聞きたそうな瞳で不安げに見つめられると胸に来るものがあるが、ひとまずは彼女の体調が最優先だろう。
「薬は安心できるものなんだろ?」
『……苦そうぅ、』
「オブラートゼリーはいかがです?」
御狐神の言葉と共に、俺と太宰と、三人揃って服用用のゼリーを取り出した。
「「「…」」」
『え、と…ど、どうしよお…?』
「風邪ひいてる子困らせてどうすんすか!一個ずつ使えばいいでしょうが!?」
結果として立場のツッコミがうまく機能して御狐神の分を開けて使い始めることにした。
三パックもあるとか思わねえだろ、用意周到かよこいつら。
『立原くんそういうところが好き』
「お前の周りの大人が揃いも揃ってこんなんなだけだ」
立原がスプーンに用意したそれにぱくりと食いついたのに思考停止して、リア様自身はまぐまぐと薬を服用なさっているのだが。
うん、わかる、わかるぞ立原。
『…ぅ、?……ちゅうやさん』
と、そこで飲み終えてから、ぽやぽやした声で俺を呼び、こちらに駆けてくる様子のリア…なのだが、また身体が小さくなっていってるような…?
赤ちゃんですか?赤ちゃんなんですか???
すりすりと俺に甘えるように頭をぐりぐりしながら、あっちからぐりぐり、こっちからぐりぐり…いや待て、なんだこれ。
可愛いけどなんだこれ、どうしたどうした。
「…リア、そういうことはお二人の時に」
『……んん、ちゅうやさん、』
「な、何だ!?リア、どうし___」
抱き上げたところで、ちぅ、と唇を吸われ…襲われた。
いやあのリアさん、ちょっと人前でキスが激しすぎる気が。
『………、…ちゅうやさ「ちょっ、ストップ!話せば分かる!!」ちゅうやさん好き、』
「うん知ってるよ!!?ありがとうな!?」
『…ちゅうやさん好き』
「御狐神、翻訳!!」
「…………薬の効果でしょう、恐らく効き始めている影響で、極めて素直になってる状態です…さっきから中原さんに甘えていたのもその、求愛行動の一種と言いますかなんといいますか…」
恐らくほとんど無意識です、と恥ずかしそうに言う御狐神はレアだったと思う。