第11章 珪線石の足音
「で、リアちゃん。このイケメン誰?」
『リアのおにいちゃん』
「初めまして、御狐神 双熾と申します」
「「面影あるなぁ〜…」」
『…ほんとう?』
嬉しそう…、うれしそう。
周囲の部下共を含めて生暖かい目線を注いでしまう。
尻尾パタパタさせて喜んでるんだもんなぁ、可愛いに決まってるだろこんな生き物。
「リア、そろそろ雑炊が食べたいんじゃないか?食べさせてやるぞ」
「いえいえ、リアはそろそろ野菜スープが飲みたい頃合いかと」
「病人挟んで取り合わないでくださいよ、いい大人が…」
『じゃあ立原くんとこ行く』
「それだけはやめてくれあの二人が怖いから」
『じゃ、村上さんとこ?』
「なんで俺だよ」
『さっきリアにチョコくれた…♡』
「リアちゃん、私のところにもおいで♡」
突如として鳴り響く、世界で一番嫌いな声。
ひょい、と抱き上げられるリアは楽しげにはしゃいでいるけれど、いや待て、なんで手前がここにいる。
『治さんだぁっ、なんでなんで?国木田さんに返してきたはずなのに??』
「もうこっちは仕事が終わったからね。可愛らしいことになってるって聞いてきたんだけど…まだ随分しんどいんだねえ?こんなにちっちゃくなっちゃって」
『しんどくないよ』
「この身体だからでしょう?ツテをたどって、複合先祖返り用に薬を調合してもらったんだ。読んでみてもらって大丈夫そうなら、飲んでほしいな」
口ぶりからして、首領も了承済みの事態であろうことに察しをつけた。
『…大変だったでしょ、こんなの…あのおじいさんかなり気難しい人なのによく薬なんてもらってこれましたね』
薬師のことは知っているそうで、面識もあるらしいリアは意外そうな顔をしてそれを見つめている。
『日帰りで京都まで行ってきたの?』
「…は?京都??」
「まあね、気にしないでよ。何やら最近無理してるらしいじゃないか?君がしたいことがあるらしいって話してみたら、あっさり薬を作り始めてくれてしまってね…また顔を見せに来いって仰ってたよ?」
『もうずっと会ってないのに私のことなんて覚えてたんだ』
「報酬はちゃ〜んと依頼人の蜻蛉さんからいただいてるから、受け取ってあげてくれないかな?じゃないと私は任務を達成していないのに報酬を受け取った詐欺師になってしまうからね」
『……本人がお見舞い来てくれるなら』