第11章 珪線石の足音
先祖返りは、同じような人生を不思議と歩んでいくものだ。
多少形は違えど、過去にも…今生は勿論、御狐神には想い人が存在し、リアと同様その思い入れといったら底知れない程のものである。
そりゃあ、言えるわけが無い。
こんなに人のことばっか考えちまうような子が、それより自分のところにいてくれなんて。
言えるなら俺が今シークレットサービスになんかなってなかっただろ。
「…って、いるのはいいが今日夜から仕事なんだよな…どうしたい?リア」
『何が…?』
「御狐神と二人でここに…は、うん、そうだな俺も一緒がいいな」
『首領にお電話する』
「賢いですねえリアは」
何を電話するつもりだこいつは。
いや、いい、今日はなんでも言うこと聞くって言ったはずだ何でもいい、何とかするしやらかしたらやらかしたで尻拭いでもなんでもしてやるよ。
「おやリアちゃん、珍しいね。どうしたのかな?」
『ボス、おにいちゃん連れてってもいい?』
「…ええっと、中也くんに代わってもらえるかな?」
『中也さんはリアの旦那さんなの』
「リアちゃん、その電話スピーカーにして」
『!はぁい、中也さん♡♡』
俺の呼び方からリアの身体の年齢に察しをつけたらしい首領はといえば、状況の説明を俺に求められる。
まずはリアに発熱があったことと、この子の言う兄が誰なのかを説明したところで、御狐神君か、と何故か訳知り声で納得される。
「ご無沙汰しております、森様」
「うん、その説はどうも。君は…あれかな?リアちゃんに甘えられちゃったんでしょうその様子だと」
「お恥ずかしながら、僕には断るようなことは「ああうん、責めてないからね!?いいよいいよ、おいで!うちなら妖怪用のセキュリティもちゃんとしてるし、リアちゃんの傍にいてあげなさい!」!!ありがたきお言葉…っ」
首領、お気持ちお察しします。
ずるいですよねこれ、なんかこう、リアとほんとそっくりでそんなこと言われたら…ねえ…?
『おにいちゃん今日はリアと遊んでくれるの?』
「遊んでもいいですけど、貴女は熱治すの時間かかるでしょう?ゆっくり休んでもらいますからね??」
『聞いた中也さんっ、おにいちゃん今日リアと遊んでくれるんだって!』
「良かったじゃん、いっぱい構ってもらえ」
『おにいちゃんと遊ぶの初めて…!』
「へえ?」
「耳が痛いです本当に」