第11章 珪線石の足音
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「おや、君が朝寝坊さんなんて珍しいね」
『…ごめんなさい、ご飯すぐ作りま…?』
朝、いつもよりも遅い時間帯に目が覚めて、同居人と同じ布団から起き上がろうとして違和感。
なんだろうこれ、からだが気持ち悪い。
「…リアちゃん?どうしたのかお兄さんに言ってみなさい?」
『…………なんでもない』
「嘘ついたら怒るよ?」
『……分かんない』
「!ふむ、そうかい…ちょっとおでこ触ってもいいかな」
『え、触っ……ッひゃ、ぅ…』
うわぁ、あつッ!?と、彼にしては珍しい大きなリアクションをされるのにビックリして思考が飛んだ。
治さんてこんなびっくりするんだ。
「…リアちゃん、君は今日は私のお手伝い禁止です。学校にはお休みさせるって連絡しておくから、お家でゆっくりしなさい」
『な…?え、でも学校…お仕事も、』
「多分熱出てるから。体温計取ってくるから、ちょっとだけいい子にして……?」
ベッドから出ていこうとした彼がなぜか私に向き直り、抱きしめて額にキスされる。
そのままなでなでして甘えんぼさん、と声をかけられて首を傾げた。
『な、なぁに?治さん』
「う〜ん、無意識かぁ残念。甘えてくれたのかと思ったんだけどなぁ」
ぎゅ♡と、何故か手を握られる感触。
私よりも大きな何かに指を絡められて、包み込まれる手。
一瞬思考が停止してそこを見やると、私の手に繋がれたそれは、確かに目の前の人物から伸ばされた手であると確認できる。
頭が追いついてからパッと離れるように手を引くも、離してもらえない。
「いいじゃない、好きにしてなよ。君は僕のお姫さまなんだから」
『ぃ、や…すぐそんなこと言っ「じゃあ一日中抱っこしてる?君恥ずかしがり屋さんなのに耐えられるの?」む、無理』
「落ちつくまで繋いでなよ、君が安心できるようになるのが一番大事だからね」
ちぅ、と手に口付けられるのに変化してしまう。
あ、やば、あんまりしないようにしてたのに…
「おや、可愛い狐さんだ」
『気味悪がらないの』
「そりゃ勿論だよ、こんな可愛らしい子に気味悪がる理由がないからね」
『じゃあ狐とえっちなことできる?』
「うん。でも元気になってからね?」
『……ふあ…ッ?♡』
まだ、さして成長していない胸に口付けて、軽く吸われたような。
「ごちそうさま♪今日はゆっくり休もうね」