第11章 珪線石の足音
夕食どきを見計らってラウンジにて無事野ばらちゃんにお礼をして、それから。
私からのお礼にたいそう喜んでくれた様子だったのだけれど、彼女は相変わらずなんの躊躇いもなく私の手を握って、言う。
「リアちゃんが…オシャレ、してる…!!!」
『…えと、昼に会った時と同じだけど』
「この爪どうしたの!?可愛くなってる!!!」
『それは中也さんが「悔しいけどやるわね中原…」…手、あんま触んない方がいいよ』
「あたしリアちゃんに視られて恥ずかしいことないから大丈夫!」
本気で言ってるんだよなこの人。
煩悩まみれで私のあられもない姿を想像しているのを指摘したところで、メニアック!とか言いながら親指立てて喜んでそう。
『……爪、変じゃないかなぁ』
「中原はなんて言ってた?」
『中也さんはなんでも可愛いって褒めるから』
「女子トーク俺も混ざりたい、リアちゃん何してもらったの?」
『!中也さんがネイル…じゃなかった、爪整えて美容液塗ってくれたの
』
混ざりにやってきた連勝に見せてと言われるのでそれを見せると、感心したようにまじまじと見つめられる。
「何これめっちゃ綺麗、中也さんこんなスキルもあったの」
『……なんか色々考えてくれたみたい』
「そう、愛されてんね〜♡」
「爪いじってる間すんげぇ大人しいんだよ、ずっと“待て”してるみてえにそわそわしてんの」
「「かんわいい〜〜〜♪」」
『だ、だって中也さんが手いっぱい触ってくれ…る、からあの…とかじゃなくてえっと、違うから』
両腕を広げて待っている様子のシークレットサービス様に正面から抱きつきに行って顔を隠し、そのまま席に案内されて夕飯を食べさせてもらう。
いつものように撫でられながら、今日は手にも構いに来てくれるのに恥ずかしくなるけれど、私が好きなのを分かって触れてくれるのが嬉しくて頭がぼうっとする。
「思ってたより気に入ってくれたっぽくて良かったよ」
『なんかその、視界によく入ってきて見えるから…可愛……か、かわいい…?』
「可愛い」
『……ネイル似合うかなあ?』
「何色でも似合うようにしてやるよ、安心しろ」
『ん…えっと、じゃああの……いやでも今のうるつやもかわいい…』
「風呂上がってからしてやろうか?」
『中也さんにモテるやつぅ?』
「…モテるやつ」
『じゃあする』