第11章 珪線石の足音
『余は満足じゃ』
「おおお、最高記録いったんじゃねえか」
「いや、貧血なんかで死にかけてっと今回の分の倍は食ってたぞ」
「俺もそろそろ感覚がおかしくなってきましたかね」
『中也さん、アイス食べましょ♪』
はいはい、とアイスクリームを準備するべく動くのにちょろちょろとついて回ってきて楽しそうなお嬢さん。
そしてそれと対照的に、食べ過ぎで辛そうに何も物を言わなくなった芥川。
「大丈夫すか?」
「……無論」
「立原、水でも入れてやれ」
「うっす」
『…リアも入れれるもん』
ん?
立原と共にピタリと止まり、何故か動き始めるリア様を見守ってみる。
水を注いで芥川に差し出しに行って、それから俺の元に戻ってきた。
思わず癖で撫で始めるが、これはあれか…お手伝いをしてくれたような認識でいいのだろうか。
「…偉いじゃねえの」
『立原くんよりリアの方がえらい』
「はいはい、えらいえらい」
『いいでしょ〜』
にっこ〜、と立原に向けて笑顔になるリアを軽くあしらいながら、立原はそうだなと肯定気味の返事をする。
こいつもリアの扱いに慣れてるよなぁ。
『中也さんとったらめっ、だからね』
「誰か取るような奴がいるっけか?」
「おい」
『ふん、色目使ってる女がいるのは知ってるんだから』
「リア、そんな言葉遣いすんな。せっかく可愛らしいのが台無しになっちまうぞ」
『……だって中也さんにいい顔する人嫌なんだもん』
マジで今日素直だなこいつ。
再び膝の上に乗せ、デザートタイムを楽しんでいただくうちにリア様の日々の鬱憤を聞いていくこととなった。
「そんないい顔されてるか?俺お前一筋って公言してるんだけど」
『……な、ならいい』
それは知らなかったことだったそうで、照れくさそうに顔を隠された。
えっ、照れてる。
リアが照れてる。
「今や仲良過ぎて、リアがいる時にはそんな近づき方してくるやつも流石にいませんしね」
『リアがいない時は…?』
「大丈夫だ、中也さん他の女にマジで興味無ぇから」
『褒めて遣わす』
撫でられてるのはリアの方だが、嬉しそうなので良しとした。
「大体俺がお前と付き合ってんの知らねぇ奴の方が少ないだろ、篠田あたりがいいように言いふらしてやがったし」
『リアが中也さんが襲われないか見ててねってお願いしたの』
「お前かよ」