第11章 珪線石の足音
しばらく泣いてから、泣き止んだ頃に食事を再開させていく。
特等席、俺の膝の上。
「リア殿、プリンです」
『芥川さんいっつも美味しいのくれるから好き』
「お前らそんなに仲良かったのか…?」
『うん、リア芥川さんだぁい好き♡』
「俺は!?俺は!!?」
『立原くん中也さんと仲良しさんするから微妙…』
「大丈夫だよ、リアとの方が仲良いから!!!」
おいこらちょっと待て、と双方に睨みを聞かせつつ、自分へのリアクションを見てみることにする。
「リアちゃん、俺は?」
『中也さんはねぇ、おっきくなったら結婚するの』
本来言われて一番嬉しいはずのその言葉に、胸が抉られたような気分になった。
この子が切に願ってくれるそれが叶わない未来を、教えられたから。
「…へえ、俺と結婚すんのか」
『うん、そしたらずっと中也さんリアと一緒にいてくれるでしょ』
「そうだなぁ、他には?何かしてほしい?」
『他…?えっとねえ……行ったことないとこに行ってみたい!』
どこかで聞いたような話だった。
そう、この子は本当に何も知らない。
「どんな所?」
『どこでもいい!』
「何ヶ所でも連れてってやるけど?」
『じゃあ美味しいものいっぱい食べに行こうよ』
お前はどこまでも素直だなぁ。
「おう、それと?」
『そ、それと?えっと…あ、遊園地ってとこ…は、ダメで……水ぞ………どこにしよっかあ?』
「遊園地でも水族館でも連れてってやるよ、なんでも言え」
『先祖返りはお外に遊びに出ちゃダメなんだって。首をはねられて死んじゃうんだよ』
「誰に言われたんだよそんなこと」
『…ママとパパ…………が、言ってたって…あのね、使用人さんが言ってたの』
どこまでも腐りきった家だな、本当に。
「俺がついてりゃそんな心配も無いだろ、違うか?」
『でも、ダメって言われたから』
「俺がいいって言ってやるよ」
『……や、破ったらいらない子になるんだよ』
「俺がもらってやるからどこにでも一緒に行けばいいんだお前は。な?」
『中也さんリアのこときらいなの…?悪い人?』
「俺はリアのこと世界で一番に愛してるよ。いい人ではねぇだろうけど」
黙りこくって、目をまん丸にさせて俺を見つめる。
それからどうしてかまたポンッ、と煙が舞って、見慣れた大きさのリアが俺の膝の上にいた。