第3章 誰そ彼時のエンジェルイヤリング
「……ねぇ、何あれ。なんでリアちゃんあんなに中原にくっついてるの!!?私と代わりなさいよそのポジション!!!」
「リア、油はねるから腕回すのやめろ」
『何、文句あるわけ?』
「火傷したら痛いだろうが…痕んなるし」
『…じゃあこっちにする』
腰に回していた腕を寄せ、彼のシャツにしがみつく。
「いやはや、お母さんにしか見えないねあれ」
「…リアちゃん、嬉しそう」
ラウンジの隣の大きな方のキッチンで、やけに豪華な料理が作られていく。
『なんでそんなに料理慣れてるの?女??』
「言い方に悪意あんぞお前。いねえっつってんだろが…強いて言うなら趣味。酒のあて作ってこだわってる内にって感じだよ」
『ふぅん、お酒好きなんだ……なに、女と飲んだりするわけですか』
「さっきからどうしたんだよお前!?そんなにか、そんなに俺を惨めな気分にさせたいか!!」
本当の本当に女性経験はないらしい。
それならばいい、うん。
何かに一人で納得してから、呆れる彼の手さばきを見つめる。
手際いい…ほんとに作り慣れてるのね。
自炊できるタイプの男の人だとは思わなかった。
「…ん。味見」
『!いいの?』
「たりめぇだろ、誰に作ってると思ってんだ」
『…えへへ』
受け取った小皿に載せられたそれを食べる。
おおっ、白身魚のフライではないか。
贅沢な味見だ。
「お味は?」
『んまいッ』
「美味しいって言え、美味しいって」
『??美味しかったら、美味いって言っちゃわない?』
「……海老フライも味見しとくか?」
『する♪』
やけにノリがいい上司様。
何か変なことでも言っただろうか。
「リアちゃん甘やかされてんね~、見てて微笑ましいわ」
『入学祝いのお料理よね〜』
「お前まだ根に持ってたのか?…おめでとさん」
『よろしいです』
お皿に盛り付けて、二人前…どころの量ではないフライたちと、サラダに味噌汁、白ご飯。
あとは煮物の小鉢と一緒に、テーブルに並べていただきます。
「お前、前々から思ってたけど馬鹿みたいな量食ってるよなぁ…今日も食堂のメニュー制覇とかしてたんだろ?俺のカードで」
『あれ、気付いてたの?…ほら、私混血種だからそれぞれで体力いったりするのよ』
「そんなもんなのか………今日お前にあんま構えなかったから、財布置いてて正解だったな」