第10章 アザレアのひととき
『ちゅうしよぉ』
「お前何盛られたの、自白剤って」
『ん〜?盛られ…??』
「麻酔って感じじゃなさそうじゃん」
『………うん〜?』
ぴん、と張る耳。
俺に触れられるのを避けるように動く尻尾。
試しに夏目にメールで問いただしてみれば、可愛らしいピースマークと共に、分かりやすく簡潔にその答えを教えてくれた。
【発情剤✌︎】
ふざけんな、どうしろってんだ相手今生理中だぞ。
俺は構わねぇけど相当嫌がられるだろこんなデリケートな時期に。
「……リアちゃん、えっちなことされたら困るだろ?な?」
『一週間もダメなの…?』
「ダメっていうかほら、前に血見ちまった時めちゃくちゃ気にしてたろお前」
『…』
聞こえる吐息が熱を帯びていて、うっすら肌も紅潮しているような。
どうりで見覚えがあるわけだ、抱き上げられてるだけで昂ってんじゃねえか。
「…ホテル行きます?」
『…………う、後ろ…使っていいよ』
「え、」
素で声が出ちまった。
いや、いやいやいやリアさん、それは些かサービスしすぎなんじゃ…
『中也さんが好きなの知ってるから』
「…いや、けど滅多に弄ってねえし」
『中也さんなら後ろでもどこでも気持ちよくさせてくれるって言ってた』
よく覚えてんなそんな前に言ったこと!?
いやまあ、普段致してる最中に触ったらいい反応するからちょくちょくしてたっちゃしてたけども。
えっ、バレてた?そりゃバレてたか素肌で触ってたわけだし。
…え???
「…………リアちゃん、まさか俺の性癖全部バレてる?」
『…結構ハードなのしてみたいんだなあって』
「すまん!?いいからな!?しなくていいからな!!?」
『中也さんならしていいよ』
排泄してるの見るのだけはやめてね、と言われたが、いいのか?
いい、のか…???
「……いや待て、けど今身体しんどいって」
『明日明後日と明明後日と、今から開発しておけばそっちで遊べると思わない?』
「いや、だから身体が」
『ちゃんと鎮痛剤飲んであげる』
とっとと車に乗せて移動することにした。
ここまで誘われてて断れるわけがあるか、明日以降のことはこいつの体調を見ながら俺が考えよう。
車に乗せるなり俺にキスをせがむ彼女に触れ合うだけのそれをすれば、感じているらしく尻尾の動き方が変わる。
まさかこんな許可がおりちまうとは。
