第10章 アザレアのひととき
「んで、夏祭り行って何してえの?事前に目当てのもんがある場所探しといてやるから、言えるだけ言ってみ」
『な、何するの?』
「……お前ほんとお嬢様だな」
『知ってるし!!!!大人数殺った人が昇格でしょ!!』
それはお前と立原の独自ルールの射撃訓練だな、と冷静につっこまれた。
むかついたから胸元に頭突きしておいたけれど。
ビクともしないや、胸板硬…
『…中也さん』
「はい、なんでしょう」
『キスマーク付けていい?』
「お好きなようにどうぞ、後でどうされるかは覚悟しとけよ」
『ひどぉい、生理中の彼女に何するつもり〜?』
「…は?えっ、きた?」
『うん、身体だる____』
言いかけたところで仰向けに転がされ、肩まで布団をかけられれば中也さんの動きが変わる。
「何か飲みもん入れてくっから、ゆっくりしてて」
『…あの、私まだ一日目だから大丈「今から甘やかされてりゃいいじゃねえか、楽にしてろ」なんか前より過保護になってない?』
「過保護でも足りねぇよ、うちの姫さんはすぐしんどいの隠して動くからなぁ」
姫さんって言った。
「ホットミルク?」
『……な、なんでもいいですよ』
「蜂蜜入りな、待ってて」
『い、行っちゃだめ…?』
ピタリと止まって振り向いて、こちらに戻ってきた彼は私を抱え上げてソファーに移し、ブランケットを上からかけて撫でてくれた。
「ここからなら話せるし構えるから、ここでいい?」
『なんか中也さんが優しい』
「そりゃどーも。褒めても何も出ねぇぞ」
ほっぺたチューが出ましたけど。
いや、うん、この人こんな人だったっけ。
慣れ?慣れなの??
『あ、の…中也さん』
「!何?」
『……私のことそこまで大事にしなくて大丈夫だよ』
「これまで散々蔑ろにしてきたからな。大事にさせて」
『あんまりこんな風にされたら怖くなるから』
「大丈夫、置いてったりしねぇから」
心を読まれたのかしら。
無くなるのが恐ろしいから、大切にされるとそれだけ気が引けてしまうのだけれど。
『……わ、私よりホットミルク??』
「リアちゃんのためのホットミルクなんすけどね」
『中也さん構ってくんないの嫌』
「………」
ふわ、と身体が彼の異能で浮き上がる。
そのまま彼の背中におぶられる形になり、めいいっぱいハグして過ごすことにした。