第10章 アザレアのひととき
『…♡』
朝から、目の前にいる彼女の気配を感じつつ、柔らかな感触が俺に触れているのが分かる。
何度も何度も可愛がらせていただいている、大天使リア様の尻尾だろう。
「……はよ、よく寝れた?」
『うん、いっぱい寝た』
「そっか、えらいじゃねえの」
眠れる時間も、当初に比べれば安定してきたものだ。
不安からか慣れないせいか、夜中に目を覚まして中々寝付けないといった日もあったのが既に懐かしい。
『あの、中也さん』
「ん?何、もうちょい寝とく?」
『ありがと。太宰さんからメールで昨日のこと聞いた』
昨日のこと…多分、あいつを妖館に呼んだことだろう。
それから…
『ほんとに会ってもいいの…?』
「俺に先に断りを入れておくことが条件な。あと、もしばったり会ってそのまま長くなりそうならそれも連絡を入れること…あんま束縛するつもりはねえけど、あんまりあっちばっか通うようならたまには文句くらい言わせろよ」
『…いっぱい文句言っていいよお♡♡』
嬉しそうに尻尾をぱたぱたさせていらっしゃる。
うん、平和だ。
「言っとくが泊まりに関しては厳しめに見るからな。分かってるだろうが」
『うん、中也さん以外の人と一緒には寝ないよ?』
「よ〜しいい子だ、分かってんじゃねえか」
撫でようとして一瞬止まり、予定を変更してキスすることにした。
できるだけ、たくさん好きを注いでやろう。
あの時この子に報えなかった分も、ありったけ。
『っ、…?♡あ、朝からいっぱいちゅうしてくれるのね??』
「まあな。朝から俺のリアが可愛いこと言ってくれるから」
『サービストーク上手くなってません?』
「好きだなと思ってついな」
『………あ、あの…もっかいして……くれないかなぁ、なんて』
分かりやすく照れてしまったらしいリアに強請られ、キス続行。
多分…あの慣れ方からして、恐らくこういう甘え方を覚えたのはあいつの仕込みがあったからなのだろう。
そりゃあそうだ、レイプされてキスが好きになる理由が分からねえし。
そうじゃなかったんだよな。
ちゃんと自分を見て尊重して、好きを伝えて触れ合ってほしかったんだよな。
『ん、ン…っ』
「…もっとする?」
『……ま、また後でにする』
「照れてんのか?可愛いなぁ」
『だ、抱っこ緩くなってますよ!』
そりゃ失敬、と抱きしめ直した。
