第10章 アザレアのひととき
ぽやぽや、ごろごろ。
妙にご機嫌になっているらしいお狐様。
甘えてくれるのはいいのだが、そう、非常に愛らしくていいのだが、火照った顔はふにゃふにゃだわ態度に毒気がないわで、分かりやすく……酔っ払っていらっしゃる。
「おい、誰だこいつに酒盛ったの」
「アルコールなんて置いてたっけ?」
「洋酒の香り付けでアウトなんだよリアは」
「そんな弱いのこの子!?」
『あつぃ、』
「……!?ダメだぞ」
服に手をかけて脱ごうとする素振りを見せ始めるのを止めると、珍しいことにするりと手袋を外されてしまい、そのまま指を絡めて頬ずりされた。
酔ってんなぁ…可愛いけども。
「えっと…!髏々宮、今大丈夫なら水もらえねぇか?リアがダウンして…、え?」
クン、と控えめにシャツを引っ張られるのでリア様に向き直れば、ニコニコ微笑んでくれるので撫で繰り回す。
そして再び、ピッチャーをちょうど持っている髏々宮に頼もうとしたところで、今度は頬に手が触れて強制的にリアの方に顔を向けられた。
…おお???素直じゃねえの。
「リアちゃん、水飲んどこうか」
『なんでそんないじわるするのぉ…?』
「意地悪って…俺が何意地悪したんだよ?」
『リアの方向いてないちゅうやさんきらぃ』
めんどくさいお願いごとが馬鹿みたいに可愛くて抱き寄せた。
そんなに嫌か、そんなにか。
そういやさっきも嫌がってたな。
「大丈夫だよ、心配しなくてもおまえの事で頭いっぱいにしてっから」
『リアより可愛い子がいたらそっちいっちゃうんでしょ』
「行かねえってば」
『だざいさんだってリアのことほったらかして全然構ってくんないし』
「待て、なんで今ここであいつの名前が…えっ、太宰に会いてぇの??」
『…久しぶりに会っても簡単にどっか行っちゃうの、冷たいと思わない?』
悪い、多分それ俺がいるせいだわ。
思いかけたところで、何故彼女が言わずにいたのかも同時にわかったような気がした。
「そりゃあリア、相手が全部悪いよ!」
『マーク君は優秀なしもべ』
「リアちゃん!?僕しもべだったの!!?」
『…呼んでなくてもいっつもリアのこと構いに来るから、優秀』
「あれ、もしかして褒められてないこれ??僕優秀だって」
『カゲ様は論外だし』
「…連れてってやろっか?太宰のところ」
ピク、と耳が動いたような。
