第10章 アザレアのひととき
チラ。
視線を感じてそちらを向くと、ぷい、と顔を背けて白鬼院や髏々宮、渡狸と会話して。
そしてまた俺が御狐神や夏目の方へ顔を向けると、再び感じるようになる視線。
あいつこっち見てんな絶対。
「白縹さん…?」
『……』
「…リアちゃん構ってほしそう」
「リア〜、リアの中也さんはここにいるぞ〜〜〜」
髏々宮の声を拾って即座に察し、リアの元へ戻る。
御狐神と話し込んでる間にもう寂しくなっちまったのか?んん〜???
よーしよしよし、と撫でれば、しゅん、と心なしか垂れ下がっていた耳や尻尾が徐々に元気になってきて、ふりふりと振れるようになる。
「こっち来ても怒んねえのに?」
『ぁ…、そう?』
いや、本当に怒られると思ってたのかよ。
「怒る要素ねえだろ、仕事中じゃあるまいし」
『……ふぅん』
いまいちよく理解していなさそうな、純粋な瞳をくりっと丸くして曖昧な反応を見せられる。
なんだこれ、この感じ。
もしかして俺が他の誰かと話してると話しかけにくいとかそういうあれか?
輪に入りにくくなる的な??
「来たい時に来たらいいじゃねえの、最近慣れてきただろ?」
『中也さんが楽しそうにしてたから』
「ええっと?……リアが話しかけてきて俺が楽しくなくなることはないんだぞ?分かってるかそこは」
『!あ、あっそう』
ぎゅ〜、と引っ付いてきて甘えられ始めた。
そんなこと心配してたのか〜この子狐ちゃん様は〜?
あー、なんかこう…目覚めそうだなそろそろ、うん。
「俺がリアのことそっちのけで他の奴と話してばっかで、寂しかったんだよなあ〜?ごめんごめん、ちゃんと構うから」
『ん、ちゅやさんはリアの…♡』
「よーしよしよし」
膝の上に乗せて、座る。
ラウンジの飾り付けも終わったようだし、あとはあいつらの帰りを待つだけで____
「「ただいま〜」」
思うより先に、帰ってきたらしい。
が、やけに反ノ塚の方は疲れた様子を見せている。
「…どうした?」
「い、や…ちょっと、純血の妖怪に出会して…………マーク君の異能の規模がデカすぎてビックリしたっていうか」
「僕ちん天才だからねえ〜!」
『マーク君仕事出来たんだ?』
「酷いよリア!?もっとちゃんと褒めて!」
『リアの方が強いし』
それはそう、と清々しく言い切ったトウェインはこちらにやって来た。
