第9章 蛍石の道標
「?お嬢ちゃん、おうち帰んないの?それならうちに泊め「あ?」っとぉ、カミさんが呼んでる」
さっきから何人目だ、全く。
白縹、こいつ、歩いてるだけで俺が少し離れたらこれって。
『な、中原さん、やっぱり大丈「どこが大丈夫なんだよ、どこが」慣れてるから…っ』
「余計問題だわアホ、危なすぎんだろこんな街で女が一人とか」
『?強いからだいじょぶ』
ダメだこいつ、全然分かっちゃいねぇ。
駐車場まで移動するだけでこれじゃあ手出されててもおかしくねぇだろ。
車の助手席の扉を開けて、座るように促す…のだが、一向に中に入る様子の無いそいつ。
「…乗らねぇんなら歩いていくか?」
『ひゃ、…っ』
ひゃ、って…え?
「………白縹?」
『、!!!!!』
ストン、と腰を抜かしてしまう彼女を思わず支えに入る。
どうしたどうした、お前何をいきなり面白おかしい挙動不審になって…あ??
死にそうな程に煩い鼓動。
耳の先まで真っ赤にして、震えてやがる。
こいつさてはマジで緊張してんのか、ガチで俺の事そういう感じに…
『せ、セクハラ…っ』
前言撤回、んなわけなかった。
「なぁにがセクハラだ、こんな細っこい体で巨漢相手に殴り込みで単身突入とか頭おかしいだろ手前、もうちょい肉付けろや」
『!!?む、胸…?おっきい方がいいの、?』
「あー、まあ適度にありゃ別に大きさは気にし…何聞いてんだ手前」
『に、肉付けろって言う、からその…』
「それこそマジのセクハラだろが、俺はお前の体心配して言ってんだよ」
心配…あれ、なんでいきなり心配とか言ってんだ俺。
『っへ、あ…え…』
「…どうした?」
『……リア、のこと…嫌いな、んじゃ…』
まさか、そんなこと気にしてんのか。
普段の行いがあれなくせして、んなこと気にして戸惑ってんのか。
「嫌ってるだけの奴の面倒買って出るような奴じゃねぇぞ俺は……嫌って欲しくねぇんならそれくらい朝飯前だぞ、幹部だからな」
取って食ったりしねぇから早く乗れ、疲れてんだろ。
軽く持ち上げるような形で彼女を車に乗せる。
やけに軽いのはどうしてだろう。
女ってこんなもんだったか?
手を離して扉を閉める…ところで、何故か伸ばされる手。
『ぁ、…』
「…すぐ隣乗るから」
しょうがねぇな、なんて、抱き寄せて撫でる。
…可愛いとこあるじゃねぇの。