第8章 タイムリミットとクローバー
「外ではあの綿さすがに持ち歩かねえんだな?」
『二号に綿とか言わないで』
綿で伝わったあたり、恐らく同じようなことを言った試しがあるのだろう。
ちゃっかり反対されてしまった。
『て、ていうかその…で、でぇとだからあの…』
「…俺しかみえてなかったんだ?」
『もうリア死んでもいいかもしれない』
「振り幅極端だよなお前」
外を出歩き始めた、それはいい。
い、いつもこんな密着していたのだろうか。
腕を絡めて、こんなにベッタリくっついてきて、まるで子供だが。
俺のフィルターを通せば確かにそこには、改めて自分の恋人になってくれた可愛い可愛いリアがいる。
…いつも、こうだったのだろう。
左腕のこの感触には、またどこか懐かしさが漂う。
『…り、りりりリア鬱陶し…あ、ご、ごめんなさい知り合ったばっかの生意気なクソガキがこんな真似しててすぐに死んできま「鬱陶しくねえぞ!!?死ぬほど嬉しいからな俺!?」ほ、ほんと??』
マジで極端。
情緒不安定かお前、そうかそうか、俺が何からも守り通してやるからなぁ不安は全部蹴散らしてやる。
はぁぁ…可愛い。
尊いというのはこういうことなのだろうか。
「ああ本当だ。ちなみに生意気なクソガキでもリアちゃんは可愛いので大歓迎です」
『り、リア中也さんのお願いならなんでも聞けるよ??』
「素直なリアも天使だな。よぉしパフェを食べに行こう、そうしよう」
従順。
いい子。
俺大好きっ子。
首領に言われて反論してきた言葉の数々全てに頷ける結果となってしまった。
まだ半日しか経っていないというのにだ。
恐ろしい程に可愛いが過ぎる、暴力だろもうここまでくると。
とっととパフェの専門店に連れて入り、好きなだけ彼女の目に止まったメニューを片っ端から注文していって焦られるものの食べさせていく。
延々と食べさせててやれる、なんだこれ尊い。
いくらでも紅茶入れててやれる。
なんだこいつ飼いたい。
「好きなだけ食べなぁもう…!!!」
『ち、中也さんが過呼吸になってる…!!?』
今なら御狐神の気持ちが嫌という程分かるぜ、いいなぁこれ!!
「俺今日から御狐神に弟子入りするわ」
『!?そ、そう君に!?なんで!!?』
「そう君!?お前あの変態をそう君って!!」
『従兄、従兄だから!!!』
ピタリと思考が停止した。
そうか、狐か。