第8章 タイムリミットとクローバー
ただの布切れと化したショーツに、ホックを止めることを許されなかったブラ。
その二つを手で押さえて、ベッドの上で、彼の着せ替え人形となって下着選びに付き合っている。
おかしな話だ、付き合わせてる側が本来私になるはずなのに。
『…あの、中也さん』
「ん?清純なのにする?それともちょっとエロいやつ?」
『や、あの…ちょっと、だけ肌寒いかな……なんて、』
恥ずかしいだけだけれど、そんなことはわかっていると言わんばかりの勢いで下着選びに悩み始めているので試しに言ってみる。
が、それが良かったのか悪かったのか。
「あ、そりゃ悪い…あんま冷やすのはよくねえしな」
なんて、ベッドを軋ませて登ってくるのに思わず目をつぶって身構えると、背中側から腕を回して抱擁され、遂に今日着けていたブラジャーを邪魔、と言って遠くへ投げられてしまったのだ。
『〜〜〜っっ!!?』
「そんな隠してんじゃねえよ、俺お前の胸好きなのに」
『や、っあ、あの、明る…全部見え、て、あ、のッ』
頭がこんがらがって軽くパニックになる。
暗い所ならまだしも、こんな、全部丸見えにされるのなんて。
心の準備も何も出来てなかったのに。
「恥ずかしがるような身体してねえよ?お前…ほら、肌も白くて滑らかで、形だって綺麗なもんだ」
『は、ッ、ぁ、あ……!、ぁあ、っ…!?』
揉みしだくような動きではなく、そのものを可愛がるような手つきで、撫でられる。
なんで、?なんでこの人、こんな触り方するの??
「もう感じてきた?褒められんのに弱いなぁリアは」
ちゅ、ちゅ、と項や肩にまた好きにキスされて、余計に神経が過敏になる。
『ち、中也さ…っ……ま、って、変、なっちゃう…おねが、…怖、い…ッ』
「…なんにも怖くねえって、教えてやりたい所だけど?」
『へ…、な、え…』
「嫌ならともかく、少しでもいいと思うならスキンシップだと思えばいい。別に特別おかしな行為をしてるわけじゃないんだ…俺と触れ合って感じちまう自分の身体、汚いなんて思ってやるな。折角可愛いんだから」
どこか、素直に聞き入れられたような気がする。
ああそうだ、私、いつもそれを気にして。
感じるのがいけないことだって思ってたのを、徐々に意識を変えようとしてくれていたこの人に…そんな痴態を晒すのが情けなくて、嫌いで。
貴方に、愛してほしかったの。