第8章 タイムリミットとクローバー
リアに連れて行かれたのは妖館。
なるほど、ここがそもそも俺の家になっていたとは…
「あっ、おっかえりリアたん中也たん☆」
「お、おお夏目」
『…ただいま』
「あっ、リアちゃん帰ってきたの!!?ガーターベルトに指挟ませてぇええ!!」
「手前雪小路、早速変態行動してんじゃねえよ、リアの教育に悪いだろうが!!?」
『っ、…』
そもそも、こいつらとはどういう経緯で知り合ったのかさえ覚えていない。
何故か、仲良くやってくれる同僚のような感覚ではいるが。
「……って、リア?」
『え…あ、……なんでもない。ちょっと…大浴場行ってくる、疲れたから』
「お、おう?」
じゃあね、とエレベーターに乗ってしまう彼女に手を振って、そこからどうしようかと思案していれば。
「えっ、ちょっ、中原!?あんた、リアちゃん放ったらかしでいいわけ!?」
「放ったらかしって、流石に風呂入るっつってんのにどうしろって「一昨日一緒に入ってたじゃない大浴場で!!!」はぁぁあああ!!?」
何言ってんだこいつ、なんで俺が女と一緒に風呂になんか入って…
「はあって、こっちの台詞よそれ!?こんなところであたしとだべってるからまたリアちゃん泣かせるんでしょうが!!」
「まあまあまあ落ち着いてよ野ばらちゃん、中也たん、わけありっぽいから」
「わけありって、何が…」
「記憶、無いんでしょ?リアたんの」
「「!!!」」
その場にいた雪小路、それから反ノ塚がこちらを見る。
「…さすがは百目」
「んふ、実はリアたんがずっと悩んでるの知ってたから」
「ちょっとちょっと中也さん?リアちゃんの記憶ないってマジで?どうやって自殺止めたの、大変だったでしょあの子」
「じ、自殺?いや、そんなことしなかったと思うけど」
「あー……ちょっと、大浴場見に行っとこうか、念の為に、一応」
困ったような声を出して、夏目が言う。
やけにはっきりしない物言いだが、少し嫌な予感がするらしい。
予知と言うよりは、親しい者の勘なのだろうが。
案内されるままに大浴場のフロアに着けば、そのまま女風呂に入り、浴室の広い湯船の中に、サラリと綺麗な白縹色の髪。
思わず中に飛び込んで彼女を抱きしめ、そのまま顔を水中から出すのだが。
「何してんだお前ッ、一人でそんなこ…として……」
鱗に、尾鰭。
俺の腕には、人魚がいた。