第8章 タイムリミットとクローバー
膝の上に座らせてもらったり、食べさせてもらったり、少し反抗して逆に食べさせてみたり。
昼食の愛妻弁当をたらふく食べてもらいながら、散々に甘え倒して、触れ合って、触れてもらって。
日が落ちるのが、恐ろしかった。
一人になるのが、怖くなった。
それを隠すように、貴方で穴埋めをするほど、余計に虚しくなっていく。
目的地に着いた頃には既に純血の妖怪の気配がこちらに向き始めているのだが、中也さん…の中にいる荒覇吐のプレッシャーに警戒してまだ行動は起こさないよう。
いっその事今来てくれれば、いくらでも未来なんて変えられるのに。
「よし、いい子で掴まってな?姫さん」
『…姫さん?』
「…リアちゃん?」
『……うん、いい子にしててあげる』
ぎゅう、とおぶってくれてる彼に抱きついて、好き放題に頬にキスして、頭を撫でて。
『ほらいたよ、太宰さん』
「ケッ」
『ケッじゃない。行くよ中也』
「へいへい…あ?お前…」
『何』
「…何でもねぇ。その調子でピッタリくっ付いとけ」
ぽんぽんと頭を撫でてから、彼は異能で太宰さんを囲う敵を一掃。
それから幹部格の一人を蹴り飛ばし、雑木林の木々がへし折れるほどの威力で猛威を振るう。
「最初に言っとくがなぁ…このゴミ片したら次は手前だからな」
「…はぁ〜〜〜……はいはい、分かったから。おチビちゃんはリアちゃんに引っ付いててよね、離したらすぐに私がお嫁にもらうから」
「誰がやるか、誰が」
辺りの組合構成員を蹴散らしてから、小屋の中に入り、Qちゃんを奪還しに向かう。
見ると、先程蹴飛ばされていった幹部さんの異能だろうか。
大きな木の根や枝が絡みついて、Qちゃんの体を拘束していた。
『…太宰さんにボケさせるまでもないわね、この程度』
狐火で目的の部位だけを燃やして、とっとと解放させてもらう。
「おおっ、そんな使い方できるのか…」
『!?ほ、褒めてる…!?』
「おおお!?そりゃあな!?」
撫でて撫でて、というように振れてくれてしまう尻尾にそれを察知してか、ベタベタに撫で回してくれるその人をじいい、と太宰さんは見ているのみ。
普段ならば冷やかしの一言や二言や十言くらいは出てきそうなのに。
そしてそこから、Qちゃんを誰かがおぶらなければならなくなった所で選手交代。
小屋を出るタイミングで戦闘開始だと、伝えた。
