第8章 タイムリミットとクローバー
何度も何度も好きを伝えられ、寝る間も惜しんで俺に口付け続けてくれるような彼女を何とか落ち着かせて、宥めて、寝付かせて。
翌朝になると、夜中にあれだけ身体を酷使していたのに、本当に弁当を用意してくれてしまっていたから驚きだ。
そして、いたいけな少女の顔をして、俺におはよう、と笑ってくれる。
昨日の今日で、そんな笑顔が見られるだなんて思わなくて、正直なところ拍子抜けだ。
「…おはよ。腰は?身体、キツかったろ…そんなに動いて」
『分身使ったから大丈___』
とん、と指の腹で軽く下腹部に触れてみると、へなへなと力を抜いて座り込みそうになるので、それを支えに入って抱き上げる。
「なぁにが大丈夫だ、何が。ヘロヘロんなってるくせに…しかも今日は俺が一日おんぶ権獲得してたはずだろ、何先に起きて料理とかしてんだよ」
『…なにそれ、だってリアにお弁当強請ったの中也さんじゃない』
「そりゃな。けど朝の時点で弁当の方が俺より長くお前といるとか聞いてねぇ」
どこかで聞いたような言い回しをする自分に、クスリと彼女が笑ってくれる。
あれ、そういえばこいつ、いつも似たようなことを…
『お弁当に妬いちゃったの?わんわん』
「……らしいな。しかもこんな豪勢な重箱の弁当だなんて聞いてねぇぞ俺は」
わしゃわしゃと頭を撫で回す。
何だこのいい子、流石は俺の嫁。
そんなに俺が好きかぁいい子だなぁ可愛いなぁほんと…
『思考回路が親バカで鬱陶しい』
「親バカ通り越して嫁バカだわコノヤロウ」
『籍入れます??』
「入れるかぁ」
『へっ、』
おっと口が滑った。
悪い悪い。
「あーすまん、入れる心づもりはとっくに出来てるってことだけ覚えてな。ただまあ今すぐってなるとほら、大学入るのにもちょっとあれな経歴になっちまうだろうし」
『…いいのに、そんなの』
「あんま冷やかしの目で見られて欲しくねえの、俺の大事な子のこと」
寝起きって素直になれるもんなんだな。
いつもと立場がまるで逆だ。
『……中也さん大好き、』
「お?素直じゃん、俺もだよリア…今日は服どうするんだ?」
『え、っと…?』
「?自分できめる?」
『!!う、ううん…中也さんの好きなのにする…♡一番好きなの選んで!』
「一番か、中々選びごたえがあるな。まあ、とりあえずリボンは朱で」
一番新しいやつだけど。