第7章 燐灰石の秘め事
はあ、と頭を抱えそうな太宰さんに追い打ちをかけるようにして電話がかかってきた。
やっば、鬼からだ。
『はぁいダーリン、愛しのリアちゃんは無事に地上に降り立ったわよ』
「なんだその挨拶!?お前発信機も盗聴器も別の場所に置いてきたろ!!?」
『うん、だってそのための潜入じゃない?』
「そのためのって…あ、ああ…あ??」
『だぁから、敵さんの拠点。もうこれで丸裸でしょ』
「………お前頭いいなぁ!!?」
全力で褒め始める我が上司様に少し引いた。
今か、今なのかこの人。
『っと、あー…ちょっと待っててねわんわん』
「誰がわんわんだコr__」
言いきらせる前に保留にして、太宰さんと中島さんに向き直る。
『改めまして、ありがとう』
「!い、いや、君だってこの街のために色々頑張ってくれたんでしょう?」
『え?…ああ、いやそっちもだけど…うちのQちゃん助けてくれて』
え、と言葉を失う中島さんに、今回のこの大規模テロを引き起こすために利用されたQちゃんのことを軽く話す。
『あの子、元々その異能力嫌いな子なの。勝手に利用されて人のこと傷付けるのなんかも…しかも呪いの発動のために、呪いにかかった全員から送られてきた痛みに耐えてたはずなのよね』
「!!!」
『まあ、だから…ありがと。私あの子、結構好きだから』
じゃあね、なんて相手の返事も聞かずに、どこか吹っ切れたような表情をしていた中島さん、そして困ったように笑っていた太宰さんに手を振って別れ、愛しのわんわんとの通話を再開する。
『ごめんごめん、お待たせ』
「…いいよ、大事な用だったんだろ」
『ええっ、中也さん以上に大事な用なんかないよ?』
「…………今どこだ」
『今ね、えっと…うん、ランドマークが壊滅してるっぽいからこっちから行くよ。ゆっくりしてて』
「ゆっくりとかふざけんな…繋いだまんまこっち来い」
電話を切らなくてもいいと、私の気持ちを汲んで彼が命令してくれるので、ありがたく繋いだまま…
途端に聞こえる、赤ん坊の鳴き声。
『……なぁに中也さん、隠し子??』
「は!!?俺にいると思ってんのか!?」
『じゃあ何、その赤ちゃん』
「立原が拾ってきたんだよ!!今樋口が親探してる!!」
中也さんが誰かと作ったわけではなかったらしい。
『…あと数秒でそっちに近付いてくる女の人』