第7章 燐灰石の秘め事
『ふにゃ、…ッ♡』
「……えっと、リアちゃん??どうしたのかな」
場所は太宰さんの元にいる分身に移り、事務所に連れられ、お茶をいれられていればたまらず完全変化してしまい、ソファーに倒れ込むことになる。
『っ、…♡♡』
言葉を分身で発せなくなるほどに舞い上がり、振れる尻尾が止まらない。
「あー…えっと、その反応もしかして中也?」
太宰さんが名前を呼ぶのに反応して、コクコクコクと首を降って肯定すればああそう、そうだよねえ、と声色がギスギスし始める。
「えっと、太宰さん…リアちゃん一体何が…??」
「…恋人と一緒にいる本体が相当照れさせられてるんじゃない?こんな嬉しそうなの見たことないもの、あいつでしょどうせ」
「こ、恋人とって…えっ、!?そんな時に分身なんか作ってこっちの手伝いしてくれたのリアちゃん!!?」
『!?お、おおおおおお仕事だもん!!リアサボってないもん!!』
「いやサボってるとは思ってないけどね!?」
慌てて本能的に谷崎さんに反論するも、少し見当違いなことを言ってしまったらしい。
が、その言葉にぴくりと耳聡く食らいついてきてくれてしまう人がここにいる。
「…へえ、“お仕事”?」
『ピャッ!!!』
「「え、」」
ドス黒いオーラを感じて、その人…太宰さんの方へと恐る恐る首を向けると、またニッコリとした顔をしており、私の方に笑いかけているのだ。
それはそれはいい笑顔で。
「ねえ、分身全部で何体作ってんの??」
『…え、えっと…八体くらい、』
「嘘だよね?ねえ??」
『………り、リアそういうのよくわかんな「嘘つくんなら全部中也にバラすよ??」五十七体作ってマス』
五十七!!?と驚く谷崎さんと国木田さんをよそに、やっぱり、とため息をつく太宰さん。
「あのさ、それで?私につけてる分身って君だけじゃないよね?」
『い、いやあの「だから、教えないんなら全部中也に報告するだけだから」…十五体くらい近くにいるかなぁってくらい、…?』
「それで、本体の体力消耗しまくってるんじゃないの。今もし本体が襲われでもしたら動けるわけ?」
『そ、そのための分身です?』
はあああ、と再びため息を吐かれた。
わざとらしく、大きめに。
「……私のところにつけてたの、入院した日からずっとでしょう?ろくに寝れてないんじゃないの、本当は」