第7章 燐灰石の秘め事
『だいたい中也さんは天然タラシなのよ、すぐ誰にだって優しくするしすぐ誰にだって愛想良くするし』
「フィルターかかってねえかリアちゃんよ、俺は誰にでも愛想どころか人相悪い方な人種だぞ」
『はぁ!?中也さんはかっこいいのよ!!変な事言うのやめてくれない!!?』
何故かキレられる中也さんことその本人、俺。
おかしいな、組織の人間に対するあれやこれやに探りを入れるというか、ストレス発散にくらいなればいいなと思って話を聞き始めたはずだったのに。
「さ、サーセン…」
『まったく、これだから天然なのよね。あーあ、やだやだ』
とか言いながらベッタベタに擦り寄ってきてちゃ説得力ねえぞこら。
そうだった、何故か途中から甘えた前回になり始めて妙に素直に…ああ、そうか今素直になってんのかこいつ。
「俺が女に言い寄られるタチの野郎に見えんのか?」
『部下達から絶大な信頼を誇ってる中原幹部ですからね〜、ええ』
「含みがあんぞその言い方。思うことがあるんならはっきり言え、そっちの方が俺は好きだぞ」
『…ほんとう?』
「二言はねぇ」
やっぱり遠慮してやがったか。
聞き返してくるのに小首を傾げて、目を丸くさせて見つめてきやがる。
クソ可愛いなこのやろうめ…
『……純粋な好意もだけど、地位とか権力とか、そういうのも含めて狙ってる人いっぱいいるの。それが嫌…そんな理由でリアが妬まれるとか、もっと嫌』
「お前、妬まれてんの?」
『気付かなかったの?』
「…まあ」
そんなにか。
いや、まあ悟りの能力で知ってるだけなのかもしれないが、そういう部分は。
『そもそも新人のくせに準幹部で、しかもそれが女って…女の人の嫉妬ってめんどくさいのよ』
「そういうのって、どうすりゃ解決するもんなんだよ。俺にできる事ってねえの?」
お前に被害があるようじゃあ見て見ぬふりもできねえし。
『手っ取り早い話はリアのこと捨てちゃうってことなんだけど』
「俺がんな事すると思ってんの?」
『……分かんない。でもまあ、そういう人達って非常時に命令違反して勝手に死んでくれるかなって』
「一応組織の構成員なんだがな??参謀さん」
『違反したからでしょその場合は。リアが悪いって言うの?』
「いや、それはねえけど。…何かされる前に、予知でもいい。分かったら俺んとこ、ちゃんと来い」