第7章 燐灰石の秘め事
少し間を置いてから、じぃ、と翻訳を求めてかそう君の方へ顔を向ける。
するとそれを察して、ニコリと微笑んで言葉に起こし始めるのだ。
寸分違わず私の思うがままの心の声を。
「そうですね…なんでこんなにおいも気配も染み込んでない上着なのよ、普段あれだけ大事に使ってるやつの方がよっぽど中也さんと一緒にいるじゃない………あたりではないかと」
『そう君キライ』
「ああっ、そんな素っ気ないリアもお兄ちゃんは嫌いじゃないですよ…!!!」
ああ、変態がいる。
いや、考えてみればそうか、元々変態しかいなかったなここ。
「そんなにいたきゃくっつきに来たら解決するんじゃねえのかお嬢さん」
『えっ、いいの??』
「「「「…」」」」
訪れる静寂。
ププッ、と笑いを堪える残夏君と連勝。
「お前…いや、そりゃいいけど。寧ろとっととくっつきに来るもんかとばかり思ってたのに反ノ塚ばっかりじゃねえか、おい手前後でツラ貸せや」
「ひいっ、ヤクザ怖い!!これがパワハラクソ幹部!!」
「棒読みで言ってっと余計煽ってんだよ!後リアの影響受けてんじゃねえ!!」
騒ぎ倒している周りに乗じて、連勝の後ろからおずおずと出ていけば彼と目がパチッと合って、少しの間見つめ合っているとん、と片腕を出されたので、あえてそちらではなく胸元に飛び込むように抱き着きに行く。
勢いを付けて。
「どぅ、ッッッ!!!?!?」
『〜…♡♡』
「うっわぁ、一瞬で尻尾生えた」
「すっ、すごい振りようだ…まるで御狐神君と瓜二つだな、本当」
中也さんが起きてくれた。
起きてリアのこと探しに来てくれた。
くっついていいって許可してくれたの。
「お、おまッッ·····力加減ってもんを知らねえのか、今もろに入っ…て、………おー、おはよう子狐ちゃん。まだ暖かくねぇから上着着てような?」
『ヤダ』
「なんでだよ、着てろ病み上がり」
『んんん…、中也さんの抱っこのが暖かいもん』
ぶっ、と一斉に吹き出す周り。
野ばらちゃんとそう君は何故か二人して鼻血だけど。
「……素足の方もあれなんですけど?リアちゃん」
『…気にしてくれるかなって』
「俺が?」
『うん』
少し、気を引きたかったというか、なんというか。
あまり何も考えずに服を着たはいいものの、普通にいるのも物足りなくて。
「…他の野郎にくっ付いてんな」