第6章 スカビオサの予兆
いいように言われて、いいようにシャツを着せられ、彼のものがいいとねだれば簡単に言うことを聞いてくれてしまい…いいように、ふかふかの布団の中に、また二人。
「お前今日中々変化解けねえな?まだ眠くないか?」
『!!ご、ごめんなさい、寝ます、すぐ寝ますっ』
「いや、無理に焦らなくていいだろ。変化してる方が素直だし」
『も、もう狐として生きていくリア…』
「戻ってこい戻ってこい、お前マジで本物の狐になりかねねぇから」
眠れるわけがない。
いつもみたいにつっこまれるか、お説教されるかの二択だって信じて疑わなかったのに。
なのに、それどころか…あ、あんな可愛がり方されるなんて。
あれ、中也さんてこんな人だったっけ…?
わかんなくなってきた。
確かにいい人だし優しいのも知っていたけれど。
それでも、こんなに??
『あ、の…』
「ん?どうした?」
『…む、無理に可愛がってやろうとして、ない?…が、頑張って甘やかしてない、??リアのこと』
「俺がそんな器用な奴に見えんのかよお前には」
『ち、中也さ…中也は、優しいから……出来ちゃう人、かなって』
最近、こんな事ばかり。
日に日に私をおかしくさせる。
私を可愛いと言ったり綺麗と言ったり、甘やかしたり我儘を言わせたり。
果てには私が悪いようなことでも謝って、私を絶対に悪者にしない。
そして私に愛情を注いで…毎日、それが溢れていく。
こんな人間、見たことない。
「…なんだろうな。いつも可愛がってっと、可愛がる度にもっともっと可愛くなってくんだよ。不思議なことに」
『…っ、…?』
私をまた、撫でてくれる。
まだ、ドキドキしてる私。
そんなふうにばっかり言われると、どうしていいか分からなくなるの。
私、知らないのこんな気持ち。
『……、教え、て…中原さん。…リア、なんでこんなにドキドキするのか分かんないの。…こんな、に…なんで、嬉しんだろ』
「…嬉しいのはお前が根は素直な子だからだろうな?…ドキドキすんのはあれだろ。リアが俺の事好きだからだ」
『え、…あ、そうなの…?』
「違うなら俺が勘違いする前に訂正してやれ」
『…チューしてくれたら、それでいいよ』
暫く黙った末に、彼から一言。
「それ、して欲しいって言ってません??」
頷くのが分かったのか分かっていないのか。
また、唇を重ねる。