第4章 培われしは藍晶石の光輝
暫く甘やかされてからまた仕事を進め、甘やかされての最中のこと。
私の携帯が震え始め、何かと思って開いてみると、登録していない知らない人からのメールが入っていた。
“モウスグアエルヨ”と、一見怪しいだけのメールの文字。
それを見ただけでも差出人は想像がつく。
「メール…?お前メールする程の仲の知り合いいたっけ?」
『……うん』
「え…、ちょ、なんでそんな嬉しそうに…?」
『今日は帰ったらケーキ作らなきゃ…ロシアンルーレットケーキにして、当たりのとこだけノーマルのケーキにしといてあげるの』
「ロシアンルーレットって逆じゃなかったか!?つか誰だよ相手は!!?」
『…愛人』
ぽそりと呟けばビクッ、と静止する中也。
ああ、これはちょっといじめすぎたかしら。
『って言ったらどうする??』
「…趣味悪ぃ。……野郎かよ」
『そうね、女の子じゃあないわ』
「ふーん?…ああそう」
いかにも不機嫌そうなオーラを放出しながら、私の隣にどす、と腰掛けてくる。
あーらら、かーわい。
『中也が連絡取らないでって言うなら、言うこと聞くよ?』
「…お前が嬉しそうにしてんのに、それをやめさせるわけねえだろ俺が」
『……妬いてないわけ?』
「別に?俺大人だし」
『ふぅん』
妬かないんだ。
…私じゃ、妬けないのかな。
なんて、どこか自分が虚しくなってきた。
彼は私に嘘をつくような人じゃないし。
どこか寂しくなったのを誤魔化すように彼に抱きついて、拒まれないのにホッとする。
「何…どうしたよ」
『…ううん、なんでも』
そういえば、私はこの人に…どれだけ女性として意識されているのだろう。
人として気に入られているのは、何となくわかる。
可愛がってもらえているのも。
しかし、私じゃ…このくらいのことじゃ、ダメらしい。
私なら、嫌なのに。
なんて。
「……パソコン持ち帰って続きやるか?お前、何か作るんなら俺にも食べさせてくれよ」
『え、…?…うん、?』
「なんで疑問形なんだよ…どこぞの野郎のためにならケーキまで作んのに?…俺には何にもねぇわけですか?」
『…作り、ます』
「よし、買い物して帰んぞ。早く食いたい」
私の心、もしかして読まれた?
いや、そんなわけないか。
けど、食べたいって言われるのは…嬉しいな、なんて思ったり。