第3章 誰そ彼時のエンジェルイヤリング
暫く彼女を達させていれば、徐々に変化が解けていって、最終的には尾が一本にまで戻っていた。
『…こんな気持ちぃの、初めてだった』
「指だけだったんだけど、よかった?」
『……中原さん、慣れてるの…?』
「いんや?初めてだよ」
『な、ら…いいや。…今日は、ご飯私が作る』
「いや、お前今腰抜けてんだろが」
まともに立てねぇくせして何言ってんだ。
無理に動かなくていいんだよこういうのの後は、と窘める。
女の方は、体に負担をかけてばかりなのだから。
『……初めて言われた、そんなの』
「…疲れてるだろ?それに病み上がりで…って、お前熱は!?」
額に触れれば、昨日ほどは熱くない。
反ノ塚に借りた体温計で測ってみれば、微熱まで熱が下がっていた。
『…元気なった』
「…一安心ってとこだな。食欲は?」
『いっぱいあります…』
「よし、じゃあとりあえず風呂入ってこい。そのままじゃ気持ち悪いだろ」
『……ふ、布団どうしよう…?』
「俺にやらせときゃいいんだよそんなん。シークレットサービス様にな」
『み、見たら…馬鹿にしない、?嫌にならない??パートナー解消しない??』
「しないしない、つかそうならせた原因俺なんだから心配すんな。上がってくる頃には飯できてるから…心配なら心読んでみ?」
全くもって心配性なこのお嬢さんは、本当に俺の心を読んだらしく、顔を真っ赤にさせて風呂場へと駆け込んでいった。
あーあー、全く…可愛らしい奴だ。
「リア、下着持って行き忘れてんぞ」
『…あ、後で中也さんに履かせるの』
「へえ?んじゃあバスタオルは?」
『……中也、さんに…お世話してもらう』
「一緒に風呂は入らないんだ?」
『もう無理なの…っ』
俺の心なんか見ちまったのが運の尽きだな。
お前が恥ずかしがるようなことしか考えてねえってのによ。
男なんかこんなもんだろ。
「ちゃんと体あっためてこいよ」
『!!…はぁい』
嬉しそうにしやがって。
彼女の愛液に塗れた布団を洗い、ベランダで干して朝食を作り始める。
今日は何を作ってやろう…あいつは何が好きなんだろう。
俺も大概、世話を焼くのが好きだったらしい。
このままじゃ本当に首にリードでも付けて飼っちまいそうだ。
…ああ、飼い慣らされてんのは俺の方なんだっけか。
初めての感覚ばかりだ、あいつといると。