第1章 思い出す
「うおおおっ!!赤髪のシャンクスが負けたぁっ!!」
「お頭飲みすぎだぁ、この酔っ払い!!」
「だっせぇなぁお頭!こりゃ今夜は伝説の夜だ!!」
銃弾はシャンクスの頬を掠めていた。ひりひりと焼けるように痛むそこを袖で拭うと、べっとりと赤く染まった。
これ以上顔に傷は作らないつもりだったのにと一人ごちていると、横から綺麗に畳まれたハンカチが差し出された。申し訳なさそうな顔をしているナマエだった。
「頭を狙いました。まさか、本当に当たるとは思わなくて・・・」
シャンクスとの力の差を考えれば、ナマエの攻撃など当たるはずもなかった。
当たって1番驚いているのは、発砲したナマエ本人だろう。
「おいおい頭には当たってないだろ?銃弾の一発くらい避けられるさ」
ありがたくハンカチを受け取り傷口に当てる。
避けられてはないのでは、というナマエの視線を受け流す。
この勝負のルールは、一太刀与えた方が勝ち、である。
もちろんシャンクスが負けるはずのないルールだった。
しかし、結果はどうだろう。
さて、どうしたものか。
「私を、いれてくれますよね?」
「ん?」
「勝負に、勝ちました。私を赤髪海賊団の船員として、船に置いてくれますよね?」
「うん?んー、まぁ、ルールがなぁ、一太刀入れるってことだし、でも実際入ったのは一太刀っつぅか一発、だからなぁ」
そんな風に屁理屈をこねて誤魔化そうとしていると、船員たちから大ブーイングが起こった。
「あんたそれでも男っすか?きったねぇ!!」
「あの赤髪に銃弾一発入れるなんてすげぇじゃねぇか!!」
「負けを認めろー!!ナマエを歓迎しろー!!」
それに続くようにどこからともなくナマエコールが始まり、何も言ってないのに船員たちはお祭り状態だ。
突如コールされたナマエは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている。
この場を収めるには、シャンクスが認めるしかなかった。