第9章 閑話 昔語り Byそらる&まふまふ
そらるside
え、何? 俺達の出会いを聞きたい?
まあ、いいけど
俺は一ノ瀬家の分家の次男として生まれた。親はファミリーの側近である一ノ瀬家当主の手駒として働き、何不自由ない暮らしをさせてもらっていた。
普通の学舎には行かず、ファミリーの子供達用の所に行く日々。
友達と呼べる奴は最初は居なかった。極力、誰も俺と話そうとしない。
そうなる事になったのは、入舎の試しのせいだ。
生徒それぞれのレベルをみる為、入る時に行う試し。それによって入るクラスが分けられる。能力によって飛び級もよくあった。
文字の書き取り、計算、心理テスト、度胸試し⋯⋯
科目は幾つもあった。
中々に難しい物もあったが、順調に俺はそれをこなしていった。
結果が張り出される日、今年のクラスを見る為の兄さん達と共に、学舎に出向いた。
張り出されるクラスの名簿一覧。
下から見ていっても、中々俺の名前はない。見落とした⋯⋯そう思うと、上の方のクラスから見ていた家族から声が上がった。
家族の元に近寄り、クラスの一覧を見る。
そこにはあった、俺の名前が。兄さんの名前の隣に。
俺のクラスは兄さんと同じ一番上だった。
嬉しさの余り、家族の方を見る。
そこには、驚きのあまり固まる両親と、こちらを射殺さんばかりに見つめる兄。
この時、俺は自分が大変な事をしてしまったと気づいた。
俺達の中で、何があっても長男の兄さんは優遇された。
周りもそうだった。
一番は長男にあげるもの。
それが当たり前。
だけど、俺は何をした?
兄さんに並んでしまった。一番ではなくなってしまった。
幼いながらも、この先を歩む道を選ばねばならないと分かった。
周りからの批判が来ることを分かりながら一番を取るのか、兄に全てを譲り二番になるのか。
家族以外味方がいない。そんな幼く弱い俺に選べるのは後者しかなかった。
こんな境遇に陥っているのが俺だけではない。
その事に気付くのはもう少し後のこと。