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お嬢と孔雀【歌い手】

第9章 閑話 昔語り Byそらる&まふまふ


まふまふside


一通りの講義は終わって、実技にまた戻った。

教師が見て回るのにボスは付いていき、一人一人どんな子なのか見極めていた。
まあ、教師の紹介は兄様達以外は適当だった。もし相川家や一ノ瀬家以外の、低い地位の家の子が選ばれてしまったら、教師の命も危うい。


そんな感じで、勿論俺達の所に来るはずもなく、終わりの時間になった。
汗を拭いて、いつもの場所に行こうと教室を出ようとした。だけど、声を掛けられた。




「そこの二人、もう一度組手を見せてみろ」




いつも一番に教室を出ているから、まだ生徒は全員居て、教師もいた。初めは僕達じゃないと思った。けどボスの指はこちらを向いていた。間違いじゃなかった。


そらるさんと見つめあって、決心した。その場に荷物を置いて、ボスの目の前、教室の中央でさっき習った型をやった。


ボスに見られてる緊張はあった。だけど、身体は固まらなかった。そらるさんがいる、それだけで勇気が湧いてきた。


型が終わった。少しの静寂の後、一人の拍手が聞こえた。ボスがして下さっていた。




「お前達、よくやるな。名はなんだ?」


「一ノ瀬彼方です」
「相川真冬です」


「なら、彼方、真冬、荷物を持って、正面玄関で待っていなさい。本邸に迎え入れよう」


「は、はい、ありがとうございます!」
「分かりました、ありがとうございます!」




後ろから兄様達の恨みがましい視線が飛んでくる。だけど、気にならなかった。


ボスに選ばれた。直属の部下となれた。


喜びを噛み締めながら、教室に行き、荷物をかき集める。全ての荷物を持って、正面玄関に行くと、既にボスが待っていらした。




「遅れて申し訳ありません」
「すみませんでした!」


「いや、構わん。さあ乗りなさい。これからについて話をしよう」













こんな感じで僕達は拾われたんです。
車の中でコードネームを貰って、本邸で部屋を貰って、その日の晩はボスと沢山お話をしました。


勿論、コードネームを持つ事で生家とは関係を断ちます。僕達は部下となったので、特にそれは顕著でした。


だから、気づくことが出来なかったんですけどね⋯⋯







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