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ハリー・ポッターと闇の姫君

第11章 【4人目の代表者】


「……少し、冷静になりなさい」

 それだけ言うと、ハーマイオニーは人ごみをかき分けそそくさと談話室へ向かって行った。ロンは何も言わなかった。

 クリスにはロンの気持ちは痛いほど分かった。ロンがどんなに手を伸ばしても掴めないものを、ハリーは沢山持っている。もちろん、その逆もしかりだ。
 だが心ではそう理解していても、今回ばかりはハリーに同情的にはなれなかった。出来る事なら、自分だって代表選手に選ばれたかった。どんな手を使っても。しかし――その望みは拾い上げた砂のごとく指の隙間からさらさらと流れ落ちていってしまった。

 悔しかった、この上なく悔しかった。その思いだけで身を焦がす思いがした。何故、何故いつもハリーなのだろう。どうして、神様は公平に幸せを分けてはくれないのだろうか。
 言いようのない感情が全身を渦巻く中、クリスは突っ立ったままのロンの肩をポン、と叩いた。自然と視線が絡む。その目を見れば、言葉は無くともロンにはクリスの思いが分かってもらえたみたいだった。

 『太った婦人』に合言葉を言うと、談話室の中はハリーを待つ人でいっぱいだった。そんな中、誰かが「ハリーが年齢線を出し抜く方法を教えていたら、クリスもあんな真似しなくてすんだのにな」と言ったのが耳に入った。
 それを聞いて、クリスは羞恥心で頬が赤くなるのを感じた。耐え切れず、クリスは逃げるように女子寮へ駆け込んだ。
 勢いよく部屋に入ると、ハーマイオニーのベッドのカーテンが閉められ、その奥から押し殺すような泣き声が聞こえてきた。クリスはそっと話しかけた。

「ハーマイオニー、大丈夫か?」
「私なら大丈夫よ、でも……でもロンに、私、酷い事を……」
「ハーマイオニーは間違っていなかったよ」
「違うわ!分かっているの、本当はロンの気持ちも分かっているのよ!でもっ、あんな状況でハリーが嘘を吐くはずがないのよ。それが分かるから、私――」

 ハーマイオニーの言葉は、やがて泣き声となって消えていった。
 いったい誰なんだろう。固い絆で結ばれていたはずの4人を、いとも簡単にバラバラにしてしまった人間は……ハリーの名を騙り『炎のゴブレット』に名前を入れた犯人はいったい……。
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