第10章 【親友とは】
ハグリッドはマダム・マクシームと話しながら、まるで見えない糸で釣られらいるかの如く、ふらふらと城の方へ向かって行ってしまった。
「なんだよ!僕達の事待たせておいて!!」
4人は怒りながらハグリッドの後を追いかけたが、何しろ足の長さが何倍も違うので追いつこうにも追いつけず、結局クリス達4人は城へ駆け込む形になった。
大広間へ入ると、そこはもう人でいっぱいだった。みんな代表選手が誰になったのか興味津々で待ちきれなかったらしい。
要となる『炎のゴブレット』は、空席になっているダンブルドアの椅子の真ん前に置かれていて、青白い炎を絶やすことなく揺れ動かしている。
「誰が選ばれるのかな?」
「もちろんアンジェリーナよ」
「そう……だな」
クリスの胸に、ふとセドリックの顔が浮かんだ。アンジェリーナが選ばれるのも嬉しいが、もしセドリックが選ばれたら心からおめでとうと言えるのに。しかしそんな事、グリフィンドール席で言えるわけが無かった。
ハロウィーン・パーティは嫌にゆっくり時が進んでいるように感じられた。それもこれも、みんなご馳走よりも、代表選手が誰だか早く知りたがっていたからだ。
美味しいデザートが並んでも、いつもより魅力的には見えなかった。中にはダンブルドアが早く食べ終わらないのかと、立ち上がって覗き込んでいる者までいた。
そしてついに、ついにデザートの皿がキレイさっぱり無くなると、生徒達は興奮してワッと騒ぎ出した。しかしダンブルドアが立ち上がると、皆嘘の様にシーンと静まり返った。クリスは自分が代表選手になる訳でもないのに妙に緊張してきた。それは誰も同じだった。緊張と期待を胸に、この時を待ち続けていた。
「さて、皆……儂の予想ではあと1分ほどでゴブレットが代表選手を選出する。名前を呼ばれた生徒は大広間の一番前に来て、教職員テーブルにそって隣りの部屋に入るよう」
ダンブルドアが杖を一振りすると、ろうそくの炎が消え、光るものと言えば天井にきらめく星空の光と『炎のゴブレット』の青白い不思議な光だけとなった。
大広間に居る全員が固唾をのんで『炎のゴブレット』を見守った。するとゴブレットの炎が赤く光り、ボッと音を立てて火花と共に1枚の羊皮紙を吐き出した。ダンブルドアがそれを丁寧に手に取って広げた。