第10章 【親友とは】
午後3時ごろ、パラパラと小雨が降って来て、3人はそれぞれのんびりしながら午後の貴重な時間を過ごした。もちろん他の誰でもない、ハーマイオニーを除いては。
ハーマイオニーは、ハグリッドにもS・P・E・Wの缶バッジを手に屋敷しもべの不当な扱いについて弁論していた。だがハグリッドはきっぱりと入会を断った。
「ハーマイオニー、俺は別にお前ぇさんが憎くてこう言うんじゃねえが、お前ぇさんのやっていることは無意味だ。それどころかあいつらを侮辱する事になる」
「どうして?現にドビーは自由になって喜んでいるし、お給料だって望んでいるって聞いたわ!」
「そりゃ、中にはそんな変わりモンもいる。だけど働くことはあいつらの本能だ。あいつらから仕事を取ったら何にも残らねぇ。ハーマイオニーのやろうとしている事はむしろあいつらを不幸にしちまう」
ハグリッドの言葉に、ハーマイオニーは憤慨している様だったが、やがて口を閉ざした。
* * *
ゆっくりと時間が過ぎ、5時半になると辺りは真っ暗になった。もうすぐハロウィーン・パーティが始まる。それに誰が代表選手なるのか早く知りたい。4人ははやる気持ちを抑えきれず一足先に小屋の外で待っていた。
そしてようやくハグリッドが出て来た時、4人はハグリッドから漂う悪臭に思わず鼻をつまんだ。
「ハグリッド、何このにおい……」
「変か?ちいっと――オー・デ・コロンをつけてみたんだが……」
4人の顔を見て、ハグリッドは「やり過ぎたみてぇだ」と言って小屋の裏へ行って体をゴシゴシ洗い始めた。ハグリッドが傍に居なくなると、ハリー、ロン、クリス、ハーマイオニーの4人は止めていた息を吐き出し、一気に息を吸った。
「オー・デ・コロン!?あのハグリッドが!?」
「それにあの格好!いったいどうしちゃったんだろう!!」
「見て、ボーバトンの生徒達よ!!」
小屋の陰に隠れて覗いていると、ハグリッドがマダム・マクシームに近づいて、何か言っている。会話はここまで聞こえないが、ハグリッドの恍惚とした表情からして、マダム・マクシームに“お熱”なのは火を見るよりも明らかだ。